血痰を契機に発見された気管・気管支骨軟骨形成症の1例

例は70歳の女性. 主訴は血痰. 以前より喀痰咳嗽を認めていたが, 平成12年3月に喀痰咳嗽増悪し血痰も出現し, 近医通院治療では軽快せず, 6月16日入院精査となった. 若年時より嗅覚の低下を自覚していた. 喀痰培養では緑膿菌が検出された. 胸部画像上は中葉の含気低下と気管支壁肥厚および内腔の拡張を認め, 副鼻腔は低形成, 上顎洞内部には著しい粘膜の肥厚, さらにその粘膜の一部に石灰化を疑わせる陰影も認めた. 血痰精査のため気管支鏡検査を施行したところ, 気管分岐部付近より, 亜分岐レベルまで内腔表面は著しい凹凸を呈し, 左の主気管支に長径約5mm, 右の主気管支に約2mmの黄白色のポリープ...

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Published in気管支学 Vol. 23; no. 3; p. 109
Main Authors 水橋啓一, 曽根崇, 織部芳隆, 古庄志保, 阿保未来, 北俊之, 安井正英, 笠原寿郎, 藤村政樹, 倉島一喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 2001
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Summary:例は70歳の女性. 主訴は血痰. 以前より喀痰咳嗽を認めていたが, 平成12年3月に喀痰咳嗽増悪し血痰も出現し, 近医通院治療では軽快せず, 6月16日入院精査となった. 若年時より嗅覚の低下を自覚していた. 喀痰培養では緑膿菌が検出された. 胸部画像上は中葉の含気低下と気管支壁肥厚および内腔の拡張を認め, 副鼻腔は低形成, 上顎洞内部には著しい粘膜の肥厚, さらにその粘膜の一部に石灰化を疑わせる陰影も認めた. 血痰精査のため気管支鏡検査を施行したところ, 気管分岐部付近より, 亜分岐レベルまで内腔表面は著しい凹凸を呈し, 左の主気管支に長径約5mm, 右の主気管支に約2mmの黄白色のポリープを認め, 鉗子にて生検を行った. ポリープは大変堅く, 病理組織では粘膜下に骨の形成が確認され, 気管気管支骨軟骨形成症と診断した. 尚, 血痰はCAMとカルボシステイン投与にて消失し, 喀痰および後鼻漏も減少した. 本症例では, 副鼻腔気管支症候群による慢性炎症が発症の基礎になっていることが推定された. 特に上顎洞の粘膜内に石灰化を疑わせる所見を認めたことは, 本症例における気管支骨形成が慢性炎症に起因することを示唆する可能性があると思われ, 興味深いと考えられた.
ISSN:0287-2137