10年前に同様のエピソードがあり, 漢方薬による薬剤性肺炎と考えられた1例

1989年に築山らが小柴胡湯による薬剤性肺炎の1例を報告して以来, 漢方薬による薬剤性肺炎の報告が増加している. 今回われわれは, 10年の間をおいて, 共通の生薬が配合されている二つの漢方薬により薬剤性肺炎が起こされたと考えられる1例を経験したので報告する. 症例は52歳, 女性. 1998年8月に発熱と呼吸困難にて入院し, 胸部レントゲン写真で両肺野びまん性にスリガラス状陰影を認め, 胸部CT写真では両肺野びまん性に淡い肺野濃度上昇と下肺野の気管支血管周囲肥厚像を認めた. 症状が出現する約10日前より投与されていた柴苓湯を中止しステロイド剤の投与を行い改善をみた. 10年前の1988年5月...

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Published in気管支学 Vol. 21; no. 3; p. 104
Main Authors 田ノ上雅彦, 小島薫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 1999
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ISSN0287-2137

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Summary:1989年に築山らが小柴胡湯による薬剤性肺炎の1例を報告して以来, 漢方薬による薬剤性肺炎の報告が増加している. 今回われわれは, 10年の間をおいて, 共通の生薬が配合されている二つの漢方薬により薬剤性肺炎が起こされたと考えられる1例を経験したので報告する. 症例は52歳, 女性. 1998年8月に発熱と呼吸困難にて入院し, 胸部レントゲン写真で両肺野びまん性にスリガラス状陰影を認め, 胸部CT写真では両肺野びまん性に淡い肺野濃度上昇と下肺野の気管支血管周囲肥厚像を認めた. 症状が出現する約10日前より投与されていた柴苓湯を中止しステロイド剤の投与を行い改善をみた. 10年前の1988年5月に同様の症状で入院し, 画像所見も今回と酷似しておりTBLBでは間質性肺炎の所見であった. 当時は原因不明とされていたが, 症状の出現する1ヵ月前より小柴胡湯が投与されており, 入院後は中止され, 抗生剤投与のみで軽快していた. 今回行った末梢血のDLSTでは柴苓湯, 小柴胡湯ともに陰性であったが, 臨床経過および画像所見よりいずれも薬剤性肺炎と考えられた.
ISSN:0287-2137