加齢による肺サーファクタントの変化

肺胞II型上皮細胞の層状封入体は肺サーファクタントの細胞内形態で, その数と容積密度が加齢により減少するとの動物実験の報告がある一方で, BAL液中リン脂質の主成分は高齢者と若年者とで差が無く, 動物実験ではむしろ増加すると報告されている. これらの現象は, 形態学的変化の結果生じる肺胞表面積の減少に対する機能的代償性変化と考えられている. 我々は, 肺サーファクタント特異蛋白質のひとつ, SP-Aが, 生理的に血液中にも存在し間質性肺炎などで血中濃度が上昇することを報告してきた. この機序は明かにされていないが, 肺胞及び呼吸細気管支レベルでの組織構造破壊と再構築が血中濃度上昇に関与している...

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Published in気管支学 Vol. 17; no. 3; p. 19
Main Authors 高橋弘毅, 本田泰人, 今井良成, 藤島卓哉, 阿部庄作
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 1995
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Summary:肺胞II型上皮細胞の層状封入体は肺サーファクタントの細胞内形態で, その数と容積密度が加齢により減少するとの動物実験の報告がある一方で, BAL液中リン脂質の主成分は高齢者と若年者とで差が無く, 動物実験ではむしろ増加すると報告されている. これらの現象は, 形態学的変化の結果生じる肺胞表面積の減少に対する機能的代償性変化と考えられている. 我々は, 肺サーファクタント特異蛋白質のひとつ, SP-Aが, 生理的に血液中にも存在し間質性肺炎などで血中濃度が上昇することを報告してきた. この機序は明かにされていないが, 肺胞及び呼吸細気管支レベルでの組織構造破壊と再構築が血中濃度上昇に関与していると思われ, 血清SP-A値の検討は, 肺局所の状態を知る上で意義があると思われる. したがって今回は, 加齢により肺サーファクタントの受ける影響をSP-Aを中心に検討したので報告する. 〔対象と方法〕健常者(n=300)の血清SP-A値を2種類の抗ヒトSP-A特異的単クローン抗体を用いたELISAキット(帝人社製)を使用し, 年代別に比較検討した. 〔結果と考察〕血清SP-A値は, 20歳代では他の年代に比べ低く, また80歳代ではやや高い傾向が見られた. また, 喫煙者群では非喫煙者群に比べ有意に高かった. したがって加齢によりSP-Aは肺より血中へ逸脱し易くなるものと考えられ, その傾向は喫煙によってさらに強まることが示唆された.
ISSN:0287-2137