診断が困難であった原発性肺アスペルギローマ症例

43歳, 女性. 主訴は血痰. 左S^8 に一部辺縁不鮮明な35×45mmの腫瘤影を認めた. CTでは内部が斑状に造影された. 気管支鏡検査では左B^8 aからの出血は確認できたが他に所見なし. 気管支洗浄液からは一般細菌, 抗酸菌, 真菌は検出されなかった. 気管支動脈造影では病変部に血管増生による濃染と一部に気管支動脈-肺動脈シャントを認めた. 同時に肺動脈, 下横隔膜動脈造影も行ったが異常所見はなく肺動静脈瘻, 肺分画症は否定された. 以上より何らかの原因による慢性炎症の存在が疑われたが腫瘍性病変も否定できず. 半年間以上血痰が続いていることもあり左下葉区域切除術を施行し, 肺アスペルギ...

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Published in気管支学 Vol. 17; no. 2; p. 202
Main Authors 中根幸雄, 大竹雅俊, 奥野元保, 斎藤博, 大宜見辰雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 1995
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Summary:43歳, 女性. 主訴は血痰. 左S^8 に一部辺縁不鮮明な35×45mmの腫瘤影を認めた. CTでは内部が斑状に造影された. 気管支鏡検査では左B^8 aからの出血は確認できたが他に所見なし. 気管支洗浄液からは一般細菌, 抗酸菌, 真菌は検出されなかった. 気管支動脈造影では病変部に血管増生による濃染と一部に気管支動脈-肺動脈シャントを認めた. 同時に肺動脈, 下横隔膜動脈造影も行ったが異常所見はなく肺動静脈瘻, 肺分画症は否定された. 以上より何らかの原因による慢性炎症の存在が疑われたが腫瘍性病変も否定できず. 半年間以上血痰が続いていることもあり左下葉区域切除術を施行し, 肺アスペルギローマの確定診断を得た. 本症例には結核, 気管支拡張症などの呼吸器疾患や免疫学的異常をきたす全身性疾患の既往はなく原発性肺アスペルギローマと考えられた. 切除標本の検討では中枢側気管支に肺組織内に浸潤するアスペルギルスが認められたが残りの気管支壁は強度の炎症細胞浸潤があるにもかかわらず保たれており, 気管支腔内を拡張しながら末梢に発育, 進展したと考えられた. 本疾患は肺構築のごくわずかな異常あるいは局所的な免疫機能の変化が感染のきっかけとなるものと思われるが今後の免疫学的知見に基づいた病態解明が待たれる.
ISSN:0287-2137