8. アルブミン尿出現における糸球体内皮細胞Glycocalyx変化のメカニズムの解明
【背景】生体における腎臓の主要な役割は体液の恒常性維持であり, そのために常時, 血液の濾過を遂行している. 細小動脈である糸球体において血液濾過が行われるが, 糸球体血管壁には, 小分子を選択的に濾過させうる濾過障壁機能が具備されている. 濾過障壁は, 内皮細胞, 基底膜, 上皮細胞の3層から構成される. 糸球体内皮細胞は, 大量濾過を可能にするために高度に分化しており, アルブミンなどのmacromoleculeも通過可能なfenestrae(窓)が存在している. 従って, 濾過障壁の主体は基底膜, 上皮細胞層に存在すると見なされてきた. 近年, 軽度のアルブミン尿が心筋梗塞や脳卒中発症の...
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Published in | 川崎医学会誌 Vol. 34; no. 4; p. 312 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
川崎医学会
2008
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ISSN | 0386-5924 |
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Summary: | 【背景】生体における腎臓の主要な役割は体液の恒常性維持であり, そのために常時, 血液の濾過を遂行している. 細小動脈である糸球体において血液濾過が行われるが, 糸球体血管壁には, 小分子を選択的に濾過させうる濾過障壁機能が具備されている. 濾過障壁は, 内皮細胞, 基底膜, 上皮細胞の3層から構成される. 糸球体内皮細胞は, 大量濾過を可能にするために高度に分化しており, アルブミンなどのmacromoleculeも通過可能なfenestrae(窓)が存在している. 従って, 濾過障壁の主体は基底膜, 上皮細胞層に存在すると見なされてきた. 近年, 軽度のアルブミン尿が心筋梗塞や脳卒中発症の基盤となる内皮機能障害と連関することが判明してきた. 糸球体内皮細胞の機能変化, ごく少量のアルブミン尿出現機能について, これまで詳細は不明であった. fenestraを含む糸球体内皮表層には陰性荷電を持つプロテオグリカンを多く含むGlycocalyx層が存在しており, この減少がアルブミン尿出現機構ではないかと推察されている. 【目的】糸球体血管内皮機能異常, Glycocalyx変化のメカニズムを解析し, アルブミン尿出現機構を解明することを目的とする. 【方法】肥満腎症モデルであるZucker Fatty ratを用いた. 6週齢雄性Zucker Fatty rat(ZF群)とZucker Lean rat(ZL群)を12週間飼育し, 尿中アルブミン排泄量の検討を行った. ZF群の一部にはアンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)の投与を行った. 活性酸素産生は2', 7'-ジクロロジヒドロフルオレセイン(DCFH)染色, Glycocalyx評価はwheat germ agglutinin(WGA)によるレクチン染色で検討した. 【結果】アルブミン尿はZF群で有意に増加し, DCFH染色も増強していた. WGA染色は, ZL群と比較しZF群で染色性が低下していた. これらはARB投与ZF群では改善していた. 【結語】アンジオテンシンIIを介したROS産生亢進により糸球体内Glycocalyxが減少し, 糸球体透過性が亢進することでアルブミン尿が出現すると考えられた. |
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ISSN: | 0386-5924 |