16. 高血圧性腎障害モデルにおける活性酸素/一酸化窒素の不均衡改善を介したピタバスタチンの腎保護作用の検討

【背景】高血圧患者は年々増加傾向にあり, それに伴い心血管イベントも増加してきている. また, 高血圧性腎障害も増加傾向にある. 高血圧環境下の血管においては酸化ストレスの亢進とそれに伴う一酸化窒素(NO)産生低下による血管内皮機能障害を認め, 腎障害を含む臓器障害の進展機序に関与する事が報告されている. HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)は高脂血症治療薬として知られているが, 最近では抗酸化作用やNOの産生促進作用といった多面的薬理作用も注目されている. 我々は, 高血圧では活性酸素種(ROS)/NO不均衡が腎障害を進展させ, スタチンはその多面的薬理作用によりこの状態を改善するとの仮...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 32; no. 3; p. 168
Main Authors 小坂義秀, 柏原直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2006
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Summary:【背景】高血圧患者は年々増加傾向にあり, それに伴い心血管イベントも増加してきている. また, 高血圧性腎障害も増加傾向にある. 高血圧環境下の血管においては酸化ストレスの亢進とそれに伴う一酸化窒素(NO)産生低下による血管内皮機能障害を認め, 腎障害を含む臓器障害の進展機序に関与する事が報告されている. HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)は高脂血症治療薬として知られているが, 最近では抗酸化作用やNOの産生促進作用といった多面的薬理作用も注目されている. 我々は, 高血圧では活性酸素種(ROS)/NO不均衡が腎障害を進展させ, スタチンはその多面的薬理作用によりこの状態を改善するとの仮説を立てた. その検証の為, 日本人に多い塩分感受性高血圧のモデルであるDahl塩分感受性高血圧(DS)ラットを用いて, ピタバスタチン(Pit)のROS/NO不均衡への効果と腎保護作用について検討した. 【方法】6週齢DSラットを0.3%低塩食(LS)群, 8%高塩食(HS)群及び高塩食+Pit投与(1mg/kg/day;HS+P)群の3群に分け4週間飼育した. 検討項目として, 平均血圧, 尿蛋白排泄量, 腎組織障害度, 核酸の酸化的修飾産物である尿中8-OHdG排泄量, NO代謝産物である尿中Nox排泄量の測定をした. 腎組織内のROS及びNOをDichlorofluorescein diacetateとDiaminorhodamine-4M AMを用いて可視化検出した. 【結果】平均血圧は, LS群に比しHS群で有意な上昇を認めた(P<0.05). Pitによる血圧への影響は認められなかった. LS群に比しHS群では尿蛋白排泄量の増加と腎組織障害の進行を認め, それらはPit投与により有意に抑制されていた(P<0.05). LS群に比しHS群では糸球体におけるROS産生亢進とNO産生低下を認め, HS+P群では両者ともに改善が認められた. 尿中8-OHdG, NOx排泄量は, 糸球体におけるROS/NOの産生状況と同様の変化を示した. 【結語】Pitは高血圧による腎障害の進行を抑制した. その効果にはROS/NO不均衡の改善が介しているものと推察された.
ISSN:0386-5924