アルポート症候群における分子生物学的研究
伴性遺伝型アルポート症候群の原因はIV型コラーゲンα鎖遺伝子(COL4A5)の突然変異である, 我々もいち早く遺伝子解析を開始し現在は全国規模の共同研究に発展している. その研究は以下の3つよりなる. 第一に分子遺伝学の手法によってわが国のアルポート症候群の遺伝形式を再検討した. その結果, 欧米白人種と同様に伴性優生遺伝型が最も多いことが判明した. 研究に用いたDNAマーカーは, 遺伝相談や出生前発症前診断に応用出来る. 第二に, COL4A5突然変異のスクリーニングである. 全体の数割しか完了していないが, PCR-SSCP法の有用性が確認された. そのうえ, 腎外症状(難聴や円錐角膜)が...
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Published in | 川崎医学会誌 Vol. 20; no. 3; pp. 241 - 242 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
川崎医学会
1994
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ISSN | 0386-5924 |
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Summary: | 伴性遺伝型アルポート症候群の原因はIV型コラーゲンα鎖遺伝子(COL4A5)の突然変異である, 我々もいち早く遺伝子解析を開始し現在は全国規模の共同研究に発展している. その研究は以下の3つよりなる. 第一に分子遺伝学の手法によってわが国のアルポート症候群の遺伝形式を再検討した. その結果, 欧米白人種と同様に伴性優生遺伝型が最も多いことが判明した. 研究に用いたDNAマーカーは, 遺伝相談や出生前発症前診断に応用出来る. 第二に, COL4A5突然変異のスクリーニングである. 全体の数割しか完了していないが, PCR-SSCP法の有用性が確認された. そのうえ, 腎外症状(難聴や円錐角膜)が少ないという我が国のアルポート症候群の特徴(Phenotype)を突然変異(Genotype)から検討することが可能になった. 第三に, 女性患者の症状の軽重にlyonizationが関与していることをRNAレベルで証明しつつある. 腎臓は血球や皮膚のように簡単に調べられないので, RNAの研究に不適切な臓器である. 我々は末梢リンパ球をcDNA源としてnested RT-PCRを組み合わせることによって, この問題を克服した. 以上の研究は, 本症の遺伝子治療のための基礎となると思われる. |
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ISSN: | 0386-5924 |