15. 眼科領域における磁気刺激法の研究 刺激コイルの特性および安全性について

〔目的〕磁気刺激法は非侵襲的に生体内各部の神経を刺激できるために, 広く臨床応用され始めている. しかし, 眼科領域への応用はその安全性のみならず詳細な磁気および電気現象が明らかにされていないため, 未だ研究段階である. これらの問題を明らかにするための基礎的実験が研究目的である. 〔方法〕まず, 実験に用いるドーナツ型(3.3Tesla)型, 8の字型(2.4T)および円盤型(2.5T)の磁気刺激コイルの特性を調べた. 直径2cmの電圧サーチコイルを用いて, 各刺激法による誘導電圧の空間的分布図を作成し, 同電圧の最強点を求めた. 次に, この3種のコイル刺激による安全性の検討を病理組織学的...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 20; no. 3; p. 230
Main Authors 錦織修道, 田淵昭雄, 寺尾章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1994
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Summary:〔目的〕磁気刺激法は非侵襲的に生体内各部の神経を刺激できるために, 広く臨床応用され始めている. しかし, 眼科領域への応用はその安全性のみならず詳細な磁気および電気現象が明らかにされていないため, 未だ研究段階である. これらの問題を明らかにするための基礎的実験が研究目的である. 〔方法〕まず, 実験に用いるドーナツ型(3.3Tesla)型, 8の字型(2.4T)および円盤型(2.5T)の磁気刺激コイルの特性を調べた. 直径2cmの電圧サーチコイルを用いて, 各刺激法による誘導電圧の空間的分布図を作成し, 同電圧の最強点を求めた. 次に, この3種のコイル刺激による安全性の検討を病理組織学的に行った. 体重2.5~3kgの成熟白色家兎11羽(コントロール群2羽, 8の字コイル刺激群3羽, ドーナツコイル刺激群3羽, 円盤型コイル群3羽)の頭頂部にそれぞれの刺激コイルの中心を水平に置いた. 刺激は出力1320Vで, 100~200回/日, 平均刺激期間45~53日, 計5000回を加えた. 最後の刺激を与えた日の翌日に脳灌流固定法を用いて屠殺し, 前頭葉, 頭頂葉, 後頭葉, 脳幹の光顕所見を検討した. 〔結果〕刺激コイルの特性については, ドーナツ型ではコイル内縁に, 8の字型では, 2つのコイルの交点に最大誘導電圧を示した. 安全性については, 刺激コイルの種類, 刺激強度および日数に関係なく, 大脳, 小脳, および脳幹組織ともに異常所見を認めなかった. 〔考按〕刺激コイルにおける最大刺激部位と誘導電圧の分布から, 有効刺激を得るためには正確なコイルの位置決めが重要であることがわかった. 安全性については, 今回の過剰の磁気刺激において少なくとも大脳, 小脳, 脳幹部への影響がないことが明らかになった. 今後, 脳組織での磁場が理論と実際とで同じであるかを確認する目的で, 白色家兎の頭頂部に各種刺激コイルを固定後, 脳内に自作極小電圧サーチコイルを挿入し, 脳内各部における誘導電圧の測定を行っている.
ISSN:0386-5924