内科合同カンファレンス・CPC抄録(平成3年2月21日)

討論 沖本先生:入院時の胸部X線所見は, 多発性結節影であり, まず転移性肺癌を考えた. 転移性肺癌は, 一般には大小不同の多発性結節影で, 結節影の辺縁はsharpで, 内部が均一なことが多い. 本例では, 辺縁はirregularでspiculeやnotchを伴い, あたかも原発性肺癌が多発しているごとき像を呈していた. このような像を呈する原発巣は, 肺癌, 膵癌が多いようで, これらの癌からの転移と考えた. 死亡前の胸部X線は, 肺門を中心とする蝶形陰影であり, ARDSの像を呈していた. ARDSの原因1)として, ショック, 感染症, 消化管出血, 原疾患(悪性リンパ腫)によるもの...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 17; no. 1; pp. 105 - 106
Main Authors 山田治, 矢野景子, 斎藤靖浩, 原田美貴, 沖本二郎, 大海庸世, 内田純一, 神崎暁郎, 真鍋俊明, 調輝男, 鼠尾祥三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1991
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ISSN0386-5924

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Summary:討論 沖本先生:入院時の胸部X線所見は, 多発性結節影であり, まず転移性肺癌を考えた. 転移性肺癌は, 一般には大小不同の多発性結節影で, 結節影の辺縁はsharpで, 内部が均一なことが多い. 本例では, 辺縁はirregularでspiculeやnotchを伴い, あたかも原発性肺癌が多発しているごとき像を呈していた. このような像を呈する原発巣は, 肺癌, 膵癌が多いようで, これらの癌からの転移と考えた. 死亡前の胸部X線は, 肺門を中心とする蝶形陰影であり, ARDSの像を呈していた. ARDSの原因1)として, ショック, 感染症, 消化管出血, 原疾患(悪性リンパ腫)によるものが考えられた. しかし, 明らかな感染徴候のないこと, 消化管出血はすでに止まっていたこと, 悪性リンパ腫は化学療法に反応していたことより, shock lungが最も考えやすい. 大海先生:入院時腹部超音波所見では, 膵頭部領域にφ3×4cmのhypoecholc massと肝(S5)にφ1.5cmの境界不鮮明なhypoechoic massを観察したが, 主膵管を含む他の腹腔内臓器に異常は認めなかった. また肺に多発病巣が存在することより, 膵頭部腫瘤がリンパ節腫大であるということは否定できないが, 病変が大きな単発病巣であることから, むしろ主膵管の関与の乏しい膵鉤部癌とその肝転移を疑った. 入院経過中に血液化学検査の異常を認めるが, 特に死亡直前のLDHの著増は, GOT・GPT値との間に解離があり, 肝実質障害のみでは説明が困難であり, むしろLDH上昇の多くは腫瘍細胞に由来するのではないかと思われた. 一方, 胆道系酵素の上昇と, 進行性のBilの上昇は, 薬剤による急性肝内胆汁うっ滞を主とし, さらには腫瘍細胞の肝実質内へのdiffuse infiltrationが加味されたのではないかと考えられた.
ISSN:0386-5924