11.中国人小児のう蝕罹患状態‐中国長春市在住の小学生

【緒言】吉林省長春市は中国の東北地方に位置し,経済発展の著しい地方都市である.現在の中国では,急激な経済発展に伴う環境変化と,食生活の多様性が小児の口腔環境に影響していると考えられる.今回我々は中国長春市在住の小学生を対象に,口腔内状態を調査する機会を得たので,その調査結果について報告する.【対象および方法】調査は2005年9月に実施し,対象は中国長春市内にある自強小学校の5歳から12歳の小児216名である.口腔内診査は自然光と人工照明下にて,被検児を仰臥位にして行った.う蝕の程度はC1からC4をう蝕として集計した.【結果】1)う蝕罹患者率は,全体で95.8%と高い値を示した.年齢別では,各年...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 26; no. 1; p. 99
Main Authors 手島陽子, 高田貴奈, 伊田博, 船津敬弘, 井上美津子, 佐々龍二, 鈴木基之, 鈴木崇夫, 魏秀峰, 倪雪岩, 高文信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 2006
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Summary:【緒言】吉林省長春市は中国の東北地方に位置し,経済発展の著しい地方都市である.現在の中国では,急激な経済発展に伴う環境変化と,食生活の多様性が小児の口腔環境に影響していると考えられる.今回我々は中国長春市在住の小学生を対象に,口腔内状態を調査する機会を得たので,その調査結果について報告する.【対象および方法】調査は2005年9月に実施し,対象は中国長春市内にある自強小学校の5歳から12歳の小児216名である.口腔内診査は自然光と人工照明下にて,被検児を仰臥位にして行った.う蝕の程度はC1からC4をう蝕として集計した.【結果】1)う蝕罹患者率は,全体で95.8%と高い値を示した.年齢別では,各年齢層において90%以上のう蝕罹患者率を示し,8,9歳では,すべてのものがう蝕に罹患していた.2)1人平均う蝕経験歯数において,乳歯では6歳から8歳で7歯以上であった.永久歯では増齢に伴い,う蝕経験歯数は上昇し11歳で3.3歯とピークを示したが,12歳では2.5歯とやや減少した.3)年齢別の1人う蝕経験歯率において,乳歯では7歳以降,う蝕経験歯率が50%以上と高い割合を示した.永久歯ではう蝕歯は増加するものの,萌出歯数も増加していたため,う蝕経験歯率は10%台を示した.4)う蝕の重症度および未処置歯について,重症う蝕を有する者の割合は52.3%であった.乳歯の未処置歯は97.2%と高い割合を示し,永久歯においても同様に未処置歯は99%であった.これらのことから,乳歯う蝕は未処置のまま重症化しながら永久歯への交換をむかえていることが推測された.これらのことから,長春市の小児に対し,生活環境の改善,口腔衛生指導といった,口腔保健活動ならびに早急な診療システムの確立の必要性が示唆された.
ISSN:0285-922X