11. 食品物性ならびに口腔機能と誤嚥のリスクの関連性

摂食, 嚥下障害者に対して安全でおいしい食品を提供しようとする場合, 食品が嚥下運動に与える影響と嚥下障害の病態診断の2つの面から検討する必要がある. そこで今回は誤嚥のリスクに与える食品物性の影響と口腔機能と誤嚥のリスクの関連性を検討した. 対象は, 脳血管疾患による摂食, 嚥下障害のために嚥下造影検査を行った36名(男性24名, 女性12名, 平均年齢は69.2±13.0歳)である. 評価方法は, 嚥下造影検査と口腔機能評価である. 造影検査の検査食には, 寒天を基材とした検査食(以下, イオアガー)と, 米飯を使用した検査食(常飯, 軟飯, 全粥, 全粥ミキサー)を使用した. 嚥下機能は...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 25; no. 4; p. 293
Main Authors 齋藤真由, 道脇幸博, 齋藤浩人, 小澤素子, 南雲正男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 2005
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Summary:摂食, 嚥下障害者に対して安全でおいしい食品を提供しようとする場合, 食品が嚥下運動に与える影響と嚥下障害の病態診断の2つの面から検討する必要がある. そこで今回は誤嚥のリスクに与える食品物性の影響と口腔機能と誤嚥のリスクの関連性を検討した. 対象は, 脳血管疾患による摂食, 嚥下障害のために嚥下造影検査を行った36名(男性24名, 女性12名, 平均年齢は69.2±13.0歳)である. 評価方法は, 嚥下造影検査と口腔機能評価である. 造影検査の検査食には, 寒天を基材とした検査食(以下, イオアガー)と, 米飯を使用した検査食(常飯, 軟飯, 全粥, 全粥ミキサー)を使用した. 嚥下機能は, 嚥下造影検査によって患者を異常なし群, 喉頭侵入群, 誤嚥群とグループ分けして群間で比較検討した. 嚥下造影検査の結果, イオアガーでは36名中7名に誤嚥がみられたのに対し, 米飯検査食での誤嚥は認めなかった. 喉頭侵入に関しては寒天検査食で6名, 米飯検査食では全粥ミキサーの2名だけであった. 口腔機能評価の結果では, 舌運動では前方挺出運動よりも左右口角接触運動の方が, 頬, 口唇運動では頬ふくらまし運動時の口唇からの空気のもれが, それぞれ誤嚥のリスクとの関連性が認められたが, 喉頭挙上運動, 構音運動, 咬合関係については, 誤嚥のリスクと明らかな関連性は認められなかった. 以上の結果から, 食品物性については硬さや付着性が低いと誤嚥のリスクが高くなると考えられた. そのため, 軽度の嚥下障害患者に米飯を提供する際には, 全粥ミキサーよりも硬さや付着性の大きい米飯が適切と考えられた. また, 口腔機能については, 舌の巧緻性や口唇閉鎖が誤嚥のリスクと関連性が高いと思われた.
ISSN:0285-922X