下顎Kennedy I級症例のコーヌス・テレスコープを適用した咬合咀嚼機能の経時的変化

近年, 高齢化に伴って少数歯残存症例に遭遇する機会が多く, 片顎総義歯, 特に上顎全部床義歯に対合する下顎遊離端欠損の症例の頻度は高く, 一般に困難な症例の一つとされている. このような患者に対する補綴処置ではまず第一に, 対合する部分床義歯の維持安定を考慮することが義歯設計の基本とされ, 通常のクラスプ義歯と比較して, 義歯の維持安定が良好でかつ咬台咀嚼機能も優れているコーヌス・クローネを応用したテレスコープ義歯の有用性は高く評価されている. そこで今回我々は, 上顎が全部床義歯で下顎にコーヌス・テレスコープを適用したKennedyI級症例患者4名を選択し, 筋電図学的立場から咬合咀嚼機能の...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 11; no. 1; p. 115
Main Authors 金鮮妃, 豊嶋康, 尾関雅彦, 芝曄彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 1991
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Summary:近年, 高齢化に伴って少数歯残存症例に遭遇する機会が多く, 片顎総義歯, 特に上顎全部床義歯に対合する下顎遊離端欠損の症例の頻度は高く, 一般に困難な症例の一つとされている. このような患者に対する補綴処置ではまず第一に, 対合する部分床義歯の維持安定を考慮することが義歯設計の基本とされ, 通常のクラスプ義歯と比較して, 義歯の維持安定が良好でかつ咬台咀嚼機能も優れているコーヌス・クローネを応用したテレスコープ義歯の有用性は高く評価されている. そこで今回我々は, 上顎が全部床義歯で下顎にコーヌス・テレスコープを適用したKennedyI級症例患者4名を選択し, 筋電図学的立場から咬合咀嚼機能の回復を把握するため, カマボコおよびピーナッツ咀嚼時の咀嚼筋の活動リズムの経時的変化を観察した. 筋活動リズム分析は筋放電持続期間, 筋放電間隔, 筋放電周期の筋放電時間の変異係数をパラメータとし, 筋電図測定は新義歯装着時から8週後までを記録した. また, 旧義歯のクラスプ義歯装着時, および天然歯列者との比較検討を行った. その結果, 新義歯装着時から2週後まで, 咀嚼筋活動リズムの規則性に乱れが観察された. これは新義歯への適応の過渡期であり, これを経過した後, 各筋の変異係数において減少傾向を示した. その後, 著明な変動は観察されなかった. 約6週後には, 旧義歯のクラスプ義歯より, 全被験者とも規則的たリズムとなり, 安定した咀嚼機能を営んでいることが推察された. また, カマボコ咀嚼よりピーナッツ咀嚼で, その傾向がみられた.
ISSN:0285-922X