外傷性第四脳室出血の1例

外傷性脳室内出血の頻度は少なく, 特に脳室内出血のみが単独で認める症例は非常にまれである. 多くの脳室内出血が, 他の脳損傷と合併し重篤な経過をたどるのに対し, 脳室内出血単独の場合, 閉塞性水頭症に対し脳室ドレナージを施行することによってその予後は良好となる. 我々は, 殴打による外傷にて, CT上第四脳室内のみに出血を認めた1症例を経験した. 症例は, 受傷後約20時間の清明期を認め, 徐々に水頭症による意識障害と両側の錐体路症状及び脳神経症状を呈して来院し, 脳室ドレナージによって神経症状は急速に改善した. また第四脳室の水平線上に位置する右耳介下に打撃部位を認めた. おそらくは, 側方...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 23; no. suppl; pp. 91 - 92
Main Authors 永井明彦, 水野重樹, 北条俊太郎, 中山比登志, 佐野圭司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1983
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:外傷性脳室内出血の頻度は少なく, 特に脳室内出血のみが単独で認める症例は非常にまれである. 多くの脳室内出血が, 他の脳損傷と合併し重篤な経過をたどるのに対し, 脳室内出血単独の場合, 閉塞性水頭症に対し脳室ドレナージを施行することによってその予後は良好となる. 我々は, 殴打による外傷にて, CT上第四脳室内のみに出血を認めた1症例を経験した. 症例は, 受傷後約20時間の清明期を認め, 徐々に水頭症による意識障害と両側の錐体路症状及び脳神経症状を呈して来院し, 脳室ドレナージによって神経症状は急速に改善した. また第四脳室の水平線上に位置する右耳介下に打撃部位を認めた. おそらくは, 側方からの衝撃が第四脳室に加わり, 脳室壁の微小血管もしくは脈絡叢を破綻させ, 出血を生じさせたのではないかと思われる. しかし脳室壁に存在する小さな血管奇形の破裂の可能性も否定できない.
ISSN:0470-8105