嚢胞腎及び嚢胞肝に合併した脳動脈瘤の1剖検例

我々は, 腎及び肝に無数の嚢胞を有し, 内頸動脈瘤の破裂により死亡した患者の剖検を経験した. 症例は73歳女性で, 母親が嚢胞腎であった. 入院時にはすでに腎機能障害が強くて, 脳動脈瘤に対する根治手術ができず, 急性水頭症に対して脳室外誘導, 脳室腹腔吻合術を行うにとどめた. その後, 脳室内出血を伴う再破裂を起こして死亡した. 剖検にて両側の腎及び肝に無数の嚢胞が発見された. これらは, 一般にpolycystic diseaseにみられるように, 一層の偏平ないしは立方上皮に蔽れた内胞を有し, 中には漿液性の内容が詰まっていた. 左のIC-PCに認められた動脈瘤は1.2×0.7×0.7c...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 23; no. suppl; p. 83
Main Authors 富田修一, 伊藤梅男, 清田満, 稲葉穣, 桶田理喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1983
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Summary:我々は, 腎及び肝に無数の嚢胞を有し, 内頸動脈瘤の破裂により死亡した患者の剖検を経験した. 症例は73歳女性で, 母親が嚢胞腎であった. 入院時にはすでに腎機能障害が強くて, 脳動脈瘤に対する根治手術ができず, 急性水頭症に対して脳室外誘導, 脳室腹腔吻合術を行うにとどめた. その後, 脳室内出血を伴う再破裂を起こして死亡した. 剖検にて両側の腎及び肝に無数の嚢胞が発見された. これらは, 一般にpolycystic diseaseにみられるように, 一層の偏平ないしは立方上皮に蔽れた内胞を有し, 中には漿液性の内容が詰まっていた. 左のIC-PCに認められた動脈瘤は1.2×0.7×0.7cmの大きさで, 一般にみられる嚢状動脈瘤と組織学的に同じであった. 多発性嚢胞腎の患者は早晩腎不全となり, 脳動脈瘤が破裂すると予後は極めて不良となるので, 予防的な意味で脳血管造影を行い, 早期に根治術を行うことが推奨されるべきと考える.
ISSN:0470-8105