中頭蓋窩硬膜内腔に発育したtrigeminal neurinomaの1症例

症例は46歳男性. 入院の約1年4ヵ月前に意識消失発作と右眼球後部痛にて発症. 臨床神経学的欠落症状なし. 頭蓋底単純写にて右側卵円孔に軽度の変形と拡大を認む. 単純CTにて右側側頭葉に広範で境界不鮮明な低吸収域を認む. 造影剤の負荷にて環状に増強効果のあることより, 被膜を有する多房性のcystic gliomaと診断した. 開頭術にて被膜を有するcystic tumorを認めたが, 脳実質との境界は明瞭であった. Tumor底部の一部は約5×7mmの硬膜小孔を介して, 神経と思われる索状物に付着していた. 病理組織所見は典型的なneurinomaであった. 考察:本症例のごとく, 中頭蓋窩...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 23; no. suppl; p. 67
Main Authors 宮沢隆仁, 宮岡誠, 佐藤潔, 石井昌三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1983
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ISSN0470-8105

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Summary:症例は46歳男性. 入院の約1年4ヵ月前に意識消失発作と右眼球後部痛にて発症. 臨床神経学的欠落症状なし. 頭蓋底単純写にて右側卵円孔に軽度の変形と拡大を認む. 単純CTにて右側側頭葉に広範で境界不鮮明な低吸収域を認む. 造影剤の負荷にて環状に増強効果のあることより, 被膜を有する多房性のcystic gliomaと診断した. 開頭術にて被膜を有するcystic tumorを認めたが, 脳実質との境界は明瞭であった. Tumor底部の一部は約5×7mmの硬膜小孔を介して, 神経と思われる索状物に付着していた. 病理組織所見は典型的なneurinomaであった. 考察:本症例のごとく, 中頭蓋窩底部の硬膜小孔を介して硬膜内腔に発育したtrigeminal neurinomaは極めてまれである. 本症例は卵円孔の変形と拡大を認めることにより, 三叉神経またはその硬膜枝より発生し, 硬膜を破壊して硬膜内腔に発育したと考えるのが妥当と思われる.
ISSN:0470-8105