開散麻痺を呈した後頭蓋窩クモ膜嚢腫の1例

症例は14才男子. 2年前より内斜視に気づき, 5ヵ月より複視が出現した. 入院時, 複視は全方向に同側性水平性に出現し, 遠方視, 下方視にて増強し, 上方視にて減弱し, 明らかに眼球運動制限がないことより開散麻痺と考えられた. 下肢の深部腱反射亢進を認めたが, 乳頭浮腫や小脳症状は認めなかった. CT scanにて後頭蓋窩後方正中部に低吸収領域を認め, metrizamide CTよりクモ膜嚢腫と診断し開放術を施行した. 術後, 複視の改善傾向が認められた. 開散麻痺の中枢は, 中脳被蓋部, 橋の外転神経核に近いところ, あるいは両側外転神経麻痺そのものにより生じうることの報告があるが,...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; p. 217
Main Authors 村上雅二, 松角康彦, 永広信治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1982
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ISSN0470-8105

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Summary:症例は14才男子. 2年前より内斜視に気づき, 5ヵ月より複視が出現した. 入院時, 複視は全方向に同側性水平性に出現し, 遠方視, 下方視にて増強し, 上方視にて減弱し, 明らかに眼球運動制限がないことより開散麻痺と考えられた. 下肢の深部腱反射亢進を認めたが, 乳頭浮腫や小脳症状は認めなかった. CT scanにて後頭蓋窩後方正中部に低吸収領域を認め, metrizamide CTよりクモ膜嚢腫と診断し開放術を施行した. 術後, 複視の改善傾向が認められた. 開散麻痺の中枢は, 中脳被蓋部, 橋の外転神経核に近いところ, あるいは両側外転神経麻痺そのものにより生じうることの報告があるが, 本症例では, 後頭蓋窩クモ膜裏腫にて頭蓋内圧亢進を呈さない程度のpressure effectにより, それらに影響を及ぼしたものと考えられた.
ISSN:0470-8105