眼球突出にて発症したWilms腫瘍の多発性骨形成性転移の成人例

眼球突出で発症, 多発性骨形成性転移を示した, Wilms腫瘍と思われる成人例を経験した. 症例は26才男性. 1980年6月より左眼球突出が進行し, 1981年5月, 左眼窩上壁骨増殖を認め入院となった. 全身の骨も同様の硬化像を示し, 生検にて転移性腫瘍が疑われた. 原発巣は不明のまま退院したが, 1981年9月, 全身骨の瀰漫性骨硬化像が著明で, 疼痛も著しくなり再入院となった. 頭蓋骨・脊椎骨の増殖のため減圧術を施行したが, 1982年7月, 肺炎を併発し死亡した. 剖検にて腎腫瘍を認め, この年齢ではまれなWilms腫瘍と判明した. Wilms腫瘍の骨転移は3.5%と少なく, 現在ま...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; p. 75
Main Authors 八塚如, 田口芳雄, 金子大成, 宇都宮隆一, 関野宏明, 鈴木正章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1982
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ISSN0470-8105

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Summary:眼球突出で発症, 多発性骨形成性転移を示した, Wilms腫瘍と思われる成人例を経験した. 症例は26才男性. 1980年6月より左眼球突出が進行し, 1981年5月, 左眼窩上壁骨増殖を認め入院となった. 全身の骨も同様の硬化像を示し, 生検にて転移性腫瘍が疑われた. 原発巣は不明のまま退院したが, 1981年9月, 全身骨の瀰漫性骨硬化像が著明で, 疼痛も著しくなり再入院となった. 頭蓋骨・脊椎骨の増殖のため減圧術を施行したが, 1982年7月, 肺炎を併発し死亡した. 剖検にて腎腫瘍を認め, この年齢ではまれなWilms腫瘍と判明した. Wilms腫瘍の骨転移は3.5%と少なく, 現在まで80余例の報告しかなく, しかも骨形成性転移を呈した例は本症例が文献上初めてである. 骨転移例は一般に予後は悪く, 平均生存年数は2年とされているが, 腎摘, 放射線治療および化学療法が効果的であり, 早期診断, 早期治療が望まれる.
ISSN:0470-8105