時期を異にして発症した両側小脳半球の血管芽腫

症例は32才男性. 1976年に頭痛, めまいを主訴に入院. 神経学的所見として乳頭浮腫, 眼振, 歩行障害を認め, 脳血管撮影にて右小脳半球血管芽腫と診断. 嚢胞性腫瘍にて壁在結節を全摘した. 以後経過良好であったが, 6年後の1982年, 精査目的で入院. 神経学的所見は眼振のみで, 血液・尿・眼底所見に異常を認めない. CT scanおよび脳血管撮影にて, 左小脳半球嚢胞性血管芽腫の診断で壁在結節を全摘した. 多発性血管芽腫の存在より, von Hippel-Lindau病を考慮し腹腔内臓器を検索したところ, body CT・腎血管撮影にて腎癌を認め左腎摘出術を施行した. 血管芽腫の多発...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; p. 72
Main Authors 猪森茂雄, 朴信史, 金一宇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1982
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ISSN0470-8105

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Summary:症例は32才男性. 1976年に頭痛, めまいを主訴に入院. 神経学的所見として乳頭浮腫, 眼振, 歩行障害を認め, 脳血管撮影にて右小脳半球血管芽腫と診断. 嚢胞性腫瘍にて壁在結節を全摘した. 以後経過良好であったが, 6年後の1982年, 精査目的で入院. 神経学的所見は眼振のみで, 血液・尿・眼底所見に異常を認めない. CT scanおよび脳血管撮影にて, 左小脳半球嚢胞性血管芽腫の診断で壁在結節を全摘した. 多発性血管芽腫の存在より, von Hippel-Lindau病を考慮し腹腔内臓器を検索したところ, body CT・腎血管撮影にて腎癌を認め左腎摘出術を施行した. 血管芽腫の多発は諸家の報告から約10%である. 腎癌合併例は欧米では33~45%であるが, 本邦では北野らの1例のみである. 腎癌がしばしば無症候性でしかも発症が血管芽腫に比べて遅発性であるため, 長期生存率低下の一因をなすと思われ, 腎癌の早期発見, 長期に及ぶfollow upの必要を強調した.
ISSN:0470-8105