先天的に右前頭骨部分欠損を示した1乳児例

右前頭骨が先天的に部分欠損し, 合併奇形のなかった11ヵ月の男児の症例を経験した. 妊娠歴や家族歴に特記すべきことなく, 正常分娩であった. 生下時より右前頭部に骨欠損があり, 11ヵ月で入院した. 入院時現症では, 右前頭部の眼窩上方に5×4cmの骨欠損部があるほかは頭部, 顔面, 皮膚に異常はなかった. 精神, 運動の発達は正常で, 神経学的欠落症状もなかった. 血液, 尿, 内分泌学的検査値は正常範囲を示した. X線頭蓋撮影で, 右前頭部に境界鮮明な楕円形の骨欠損部があるほかは形や縫合線は正常で, 他の骨格系に異常はなかった. CT像で嚢胞や脳室拡大はなく, 脳血管撮影でも異常所見はなか...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; p. 62
Main Authors 朝日茂樹, 中山賢司, 宮坂佳男, 松森邦昭, 別府俊男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1982
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Summary:右前頭骨が先天的に部分欠損し, 合併奇形のなかった11ヵ月の男児の症例を経験した. 妊娠歴や家族歴に特記すべきことなく, 正常分娩であった. 生下時より右前頭部に骨欠損があり, 11ヵ月で入院した. 入院時現症では, 右前頭部の眼窩上方に5×4cmの骨欠損部があるほかは頭部, 顔面, 皮膚に異常はなかった. 精神, 運動の発達は正常で, 神経学的欠落症状もなかった. 血液, 尿, 内分泌学的検査値は正常範囲を示した. X線頭蓋撮影で, 右前頭部に境界鮮明な楕円形の骨欠損部があるほかは形や縫合線は正常で, 他の骨格系に異常はなかった. CT像で嚢胞や脳室拡大はなく, 脳血管撮影でも異常所見はなかった. 本症例は, 前頭部潜在性二分頭蓋とも異なり, 骨欠損部は正中と離れて存在した. 前頭骨の先天的部分欠損についての報告はまれで, 1969年のMatsonの記載に同様の1例が見い出せた. 骨欠損の成因としては, 胎生期の前頭骨骨化点のなんらかの発育障害が推察された.
ISSN:0470-8105