後頭蓋窩の多発性脳膿瘍の1手術例

症例は58才男性. 入院の3ヵ月前にめまいと歩行障害で発症し, その後嘔気と後頭部痛を訴えて当科に入院した. 入院時, 意識は清明で, 神経学的に末梢性右顔面神経麻痺, 両側感音性難聴, 側方注視時の眼振, 四肢体幹失調を認めた. 一般検査成績で, 中等度の血沈亢進と血清IgEが高値を示したが, 髄液には異常所見を認めなかった. CT上, 右小脳半球と橋にリング状増強効果を示す占拠性病変を認め, 後頭蓋窩多発性膿瘍の診断で手術を行い, 右小脳半球内の膿瘍を摘出したが, 橋の膿瘍には侵襲を加えなかった. 膿汁の培養で黄色ブドウ球菌が同定され, 術後感受性を有する抗生剤の投与により症状は軽快し,...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; p. 34
Main Authors 斎藤均, 米谷元裕, 神里信夫, 坂本哲也, 古和田正悦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1982
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Summary:症例は58才男性. 入院の3ヵ月前にめまいと歩行障害で発症し, その後嘔気と後頭部痛を訴えて当科に入院した. 入院時, 意識は清明で, 神経学的に末梢性右顔面神経麻痺, 両側感音性難聴, 側方注視時の眼振, 四肢体幹失調を認めた. 一般検査成績で, 中等度の血沈亢進と血清IgEが高値を示したが, 髄液には異常所見を認めなかった. CT上, 右小脳半球と橋にリング状増強効果を示す占拠性病変を認め, 後頭蓋窩多発性膿瘍の診断で手術を行い, 右小脳半球内の膿瘍を摘出したが, 橋の膿瘍には侵襲を加えなかった. 膿汁の培養で黄色ブドウ球菌が同定され, 術後感受性を有する抗生剤の投与により症状は軽快し, 血清IgEも正常化し, 術後46日目に独歩退院した. なお, 膿瘍の原発巣は不明であった. 以上, 最近経験した後頭蓋窩多発性膿瘍の1手術創を報告した.
ISSN:0470-8105