広範な骨破壊と内頸動脈狭窄を伴ったsphenoid sinus mucoceleの1例
症例は, 18年前に副鼻腔炎の手術既往を有する38才男性で, 1982年1月右眼窩部痛, 複視眼球突出を主訴として来院した. 頭部単純撮影ではトルコ鞍底, 鞍背, 斜台の骨破壊を認めたが, 後床突起は正常であった. CTでは, 右篩骨洞と蝶形骨洞の拡大と右海綿静脈洞の圧迫所見がみられた. トルコ鞍断層撮影では上記所見のほかに右視束管底の破壊もみられ, 右頸動脈撮影ではcavernous portionの外側への偏位と狭窄がみられた. 以上より, 篩骨洞および蝶形骨洞粘液嚢腫と診断し, 蝶形骨洞経由の開放術を行い灰黄緑色の粘液を吸引した. 細菌培養は陰性であった. 蝶形骨洞粘液嚢腫は比較的まれと...
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Published in | Neurologia medico-chirurgica Vol. 22; no. suppl; pp. 14 - 15 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本脳神経外科学会
1982
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ISSN | 0470-8105 |
Cover
Summary: | 症例は, 18年前に副鼻腔炎の手術既往を有する38才男性で, 1982年1月右眼窩部痛, 複視眼球突出を主訴として来院した. 頭部単純撮影ではトルコ鞍底, 鞍背, 斜台の骨破壊を認めたが, 後床突起は正常であった. CTでは, 右篩骨洞と蝶形骨洞の拡大と右海綿静脈洞の圧迫所見がみられた. トルコ鞍断層撮影では上記所見のほかに右視束管底の破壊もみられ, 右頸動脈撮影ではcavernous portionの外側への偏位と狭窄がみられた. 以上より, 篩骨洞および蝶形骨洞粘液嚢腫と診断し, 蝶形骨洞経由の開放術を行い灰黄緑色の粘液を吸引した. 細菌培養は陰性であった. 蝶形骨洞粘液嚢腫は比較的まれとされ, 本症のように後上方に伸展したり, 内頸動脈の圧迫や狭窄をきたすのはまれである. 診断は副鼻腔炎の既往, 頭部単純撮影, 断層撮影のほかにCTでも嚢腫の輪郭と内容の性状や骨破壊の程度を知ることができることから, 診断的価値はきわめて高いことが知られた. |
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ISSN: | 0470-8105 |