圧波出現病態に関する臨床的・実験的検討

目的:頭蓋内圧記録時にみられる圧波出現機構について検討するため, 臨床圧モニター例について頭蓋内圧とvital sign変化との関連を中心に観察し, さらに, 動物実験にて圧波モデルを作成して圧波出現病態について検討を加えた. 方法:臨床40症例において頭蓋内圧連続測定(硬膜外法)とともに呼吸運動, 血圧変動等を記録し, これらの相互関連を観察した. 動物実験においては成犬18頭を用い, 自家凝血2~4mlを一側または両側の大脳内に注入し, 自発呼吸下に, 頭蓋内圧, 呼吸, 血圧, 中心静脈圧, 脳静脈洞圧等を連続記録し, 併せて圧波出現各段階での脳灌流状態について墨汁注入法により検討した....

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 19; no. suppl; p. 127
Main Authors 古瀬和寛, 口脇博治, 蓮尾道明, 中矢武彦, 当山清紀, 寺岡正晴, 景山直樹, 池山淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1979
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Summary:目的:頭蓋内圧記録時にみられる圧波出現機構について検討するため, 臨床圧モニター例について頭蓋内圧とvital sign変化との関連を中心に観察し, さらに, 動物実験にて圧波モデルを作成して圧波出現病態について検討を加えた. 方法:臨床40症例において頭蓋内圧連続測定(硬膜外法)とともに呼吸運動, 血圧変動等を記録し, これらの相互関連を観察した. 動物実験においては成犬18頭を用い, 自家凝血2~4mlを一側または両側の大脳内に注入し, 自発呼吸下に, 頭蓋内圧, 呼吸, 血圧, 中心静脈圧, 脳静脈洞圧等を連続記録し, 併せて圧波出現各段階での脳灌流状態について墨汁注入法により検討した. 結果:臨床観察におけるA波出現は20~40mmHgの圧レンジに多発し, β波は広く5~70mmHgに亘り分布した. この際, 呼吸運動との密接な関連を認め, 通常呼吸抑制期が圧上昇期と対応し, 一部症例では血圧下降が圧波出現と同期した. 圧波出現率は睡眠期に高く, 血液ガス分析とは関連を認めず, 圧波発現と脳幹機能との関連を示唆した. 実験モデルによる観察では, 圧波出現は20~60mmHgでみられ, さらに圧上昇をみて持続的高頭蓋内圧に移行した際には律動的圧変動は消失した. この圧波発現は呼吸運動の抑制, 血行下降とよく同期し, この段階での組織灌流は比較的良好に保たれ, 持続性高頭蓋内圧の際の広汎なnon-fillingと対照を示した. 一方, 静脈洞圧は初期の小さな圧波出現時には頭蓋内圧と同調して変動したが, 大きな圧波を呈してくる段階では圧上昇に一致してその下降とともに振幅を減じ, 圧波波形に脳静脈還流状態が関与すると考えられた. 結論:以上から, 圧波発現には頭蓋内圧亢進状態で生ずる脳幹機能失調がtriggerとして関与し, 脳静脈還流の態様が圧波波形の形成に重要な関連を有することが推定された.
ISSN:0470-8105