天幕髄膜腫の診断・治療上の問題

我々の経験した天膜髄膜腫は10例で(男性1例, 女性9例), その年令分布は36~70才で, 40才前後に6例と多い. 天幕下の7例のうち6例はiceberg様を呈し, 一部が天幕上の伸展を示す. 天幕上の3例はいずれも天幕下面に伸展を示していた. 横静脈洞に附着しているものは8例あり, 残りの2例はそれぞれ天幕切痕の傍正中および側方にあり, この2例は天幕上のものであった. Iceberg型6例のものの症状は, 頭痛, 聴神経障害, うっ血乳頭, 水頭症を全例に認め, 歩行障害, 三叉神経障害, 小脳症状を多数に認めた. 不全片麻痺は4例にあり, うち2例は腫瘍側に認めた. これに対して天幕...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 19; no. suppl; p. 48
Main Authors 河野守正, 堀江武, 牧野博安
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1979
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ISSN0470-8105

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Summary:我々の経験した天膜髄膜腫は10例で(男性1例, 女性9例), その年令分布は36~70才で, 40才前後に6例と多い. 天幕下の7例のうち6例はiceberg様を呈し, 一部が天幕上の伸展を示す. 天幕上の3例はいずれも天幕下面に伸展を示していた. 横静脈洞に附着しているものは8例あり, 残りの2例はそれぞれ天幕切痕の傍正中および側方にあり, この2例は天幕上のものであった. Iceberg型6例のものの症状は, 頭痛, 聴神経障害, うっ血乳頭, 水頭症を全例に認め, 歩行障害, 三叉神経障害, 小脳症状を多数に認めた. 不全片麻痺は4例にあり, うち2例は腫瘍側に認めた. これに対して天幕上の3例では, 頭痛, 複視, うっ血乳頭, 四肢不全麻痺を半数以上に認めた. 放射性同位元素の投与で異常集積像を認めなかった1例は^^203 Hgを用いたため, 横静脈洞との重なりを十分に分析しえなかったためと思われる. 一方CTでは, 造影剤による増強効果が認められ, 再発を含めたスクリーニングのための検査としては優れているものと考える. 腫瘍の栄養血管はいずれも外頸動脈系からのものが, 天幕切痕傍正中部の1例を除き全例に認められ, 上行咽頭枝, 中硬膜動脈, 後頭動脈が関与し, 異常血管像, 腫瘍陰影, 循環時間の遅延等を示す. 内頸動脈, 椎骨動脈系のものでは, 天幕枝, 上小脳動脈, 後大脳動脈, 中大脳動脈等が関与していた. 天幕下の腫瘍には上小脳動脈が, 天幕上では中大脳動脈, 後大脳動脈からの血液供給が多い. 静脈相で, 横静脈洞の造影されないものが7例中5例あり, このうち4例に横静脈洞を含めた腫瘍の全摘出を行った. 横静脈洞の造影がない場合腫瘍の静脈洞内浸潤が疑われるので, 横静脈洞を含めた腫瘍切除を行った方が再発防止の点から優れていると考える.
ISSN:0470-8105