脳血管攣縮に対する免疫学的研究

我々はクモ膜下出血後に生ずる脳血管攣縮の成因について免疫学的な観点より検討した. ヒトの髄液と自家動脈血の各成分を無菌的に混合し, 37℃で艀置すると, 髄液と血清, 髄液と非勧化血清を混合したものでは, 3日目頃より白色沈澱物が肉眼的に認められるようになる. この白色沈澱物は蛍光抗体法で抗ヒトIgG, IgM, IgA, βIC/IA血清に対し陽性で, 特に抗IgG, βIC/IA血清で著明な蛍光を発した. また髄液と動脈血の各成分を混合し, 艀置したものを遠沈し, 上清と沈渣に分離した. それぞれをろ紙につけ, ラットの腸間膜血管に塗布して血管の収縮の有無をみると, 髄液と全血あるいは血清...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 19; no. suppl; p. 34
Main Authors 鬼頭健一, 清水隆, 星妙子, 高橋研二, 山崎直美, 高橋信, 井上憲夫, 山根冠児, 喜多村孝一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1979
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Summary:我々はクモ膜下出血後に生ずる脳血管攣縮の成因について免疫学的な観点より検討した. ヒトの髄液と自家動脈血の各成分を無菌的に混合し, 37℃で艀置すると, 髄液と血清, 髄液と非勧化血清を混合したものでは, 3日目頃より白色沈澱物が肉眼的に認められるようになる. この白色沈澱物は蛍光抗体法で抗ヒトIgG, IgM, IgA, βIC/IA血清に対し陽性で, 特に抗IgG, βIC/IA血清で著明な蛍光を発した. また髄液と動脈血の各成分を混合し, 艀置したものを遠沈し, 上清と沈渣に分離した. それぞれをろ紙につけ, ラットの腸間膜血管に塗布して血管の収縮の有無をみると, 髄液と全血あるいは血清または非働化血清を混合した上清および沈渣のみが血管を収縮させた. さらに各疾患患者(40例)の髄液をラットの腸間膜血管に塗布すると, クモ膜下出血後脳血管撮影で簗縮が認められる患者の血性髄液のみが5例中3例ラットの腸間膜血管を収縮させた. 高血圧性脳出血で脳室へ穿破し脳室ドレイナージを行っている患者の血性髄液では, 血管の収縮はみられなかった. また剖検あるいは手術時採取した血管および脳動脈瘤(13例)について抗ヒトIgG, IgM, IgA, βIC/IA血清による蛍光抗体法を行うと, 脳動脈瘤患者では頭蓋内血管の中膜はすべて陽性で, 特に動脈瘤壁は強い蛍光を発した. 脳動脈瘤以外の疾患でも頭蓋内の血管は蛍光を発するが, 脳動脈瘤の症例よりも一般に弱かった. 頭蓋外の血管は陽性率が低かった. 以上より, クモ膜下出血後のいわゆる晩期血管攣縮は, クモ膜下出血後に血清と髄液の混和により形成された免疫複合体あるいは凝集免疫グロブリンが補体系を活性化し, 順次アナフィラトキシンなどが生成されて血管壁に作用し, Arthus反応を惹起した結果であると考えられる.
ISSN:0470-8105