下垂体腺腫鞍上伸展例に対する経蝶形骨洞手術

高度の視力, 視野障害を伴う下垂体腺腫症例に対する経蝶形骨洞手術法の治療効果を, 従来の開頭法による結果と比較検討した. 昭和49年以降に経験した下垂体腺腫167例中59例に著明な鞍上伸展を認め, 26例は経蝶形骨洞手術法で, 33例は前頭開頭法で行った. 経蝶形骨洞手術時には, 腰椎クモ膜下腔にカテーテルを留置し, 鞍上伸展部をイメージテレビで確認しつつ腺腫摘出をすすめ, 症例によっては空気, 乳酸リンゲル液の注入によりトルコ鞍隔膜の降下を図った. 経蝶形骨洞手術後の視機能回復はめざましく, 視力は19眼(54%)が正常に復し, 15眼(43%)に改善がみられ, 1眼(3%)のみ不変であった...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 19; no. suppl; p. 21
Main Authors 中根藤七, 桑山明夫, 渡辺正男, 蟹江規雄, 景山直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1979
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Summary:高度の視力, 視野障害を伴う下垂体腺腫症例に対する経蝶形骨洞手術法の治療効果を, 従来の開頭法による結果と比較検討した. 昭和49年以降に経験した下垂体腺腫167例中59例に著明な鞍上伸展を認め, 26例は経蝶形骨洞手術法で, 33例は前頭開頭法で行った. 経蝶形骨洞手術時には, 腰椎クモ膜下腔にカテーテルを留置し, 鞍上伸展部をイメージテレビで確認しつつ腺腫摘出をすすめ, 症例によっては空気, 乳酸リンゲル液の注入によりトルコ鞍隔膜の降下を図った. 経蝶形骨洞手術後の視機能回復はめざましく, 視力は19眼(54%)が正常に復し, 15眼(43%)に改善がみられ, 1眼(3%)のみ不変であった. 特に眼前手動~0.1までの高度視力障害を呈した5症例においても2例は正常視力に回復している. 視野は正常化34眼(72%), 改善8眼(16%), 不変6眼(12%)であった. これに対し前頭開頭法を施行した症例での成績は, 視力, 視野の正常化および改善例をあわせても約60%であり, ときに視力悪化を招くこともあり, 年令, 罹病期間, 腺腫の大きさには両者間に大差ないにもかかわらず, 明らかに経蝶形骨洞手術法がまさっていた. すなわち経蝶形骨洞手術法では高度の鞍上伸展を伴う場合でも, 手術操作による前頭葉, 視神経およびその栄養血管を損傷する危険がなく, 十分な腺腫摘出が可能である. したがって正常トルコ鞍で鞍上伸展高度の症例, 側方伸展のみの症例およびdumbbell typeなど特殊な場合をのぞき, 経蝶形骨洞手術法により満足すべき治療効果が得られる.
ISSN:0470-8105