急性期重症頭部外傷に対する広範囲減圧開頭術の効果について

昭和41年6月より一貫して, 頭蓋内血腫の除去だけでは解決しえない頭蓋内圧亢進に対処する手段として早期に広範囲の減圧開頭術をとる方針をとってきたが, 昭和49年12月までの154例には生命予後のみならず社会復帰について平均50ヵ月にわたる追跡調査を行った. さらにその後の53例については生命予後について検討した. 初期の症例154例をseries 1, 後の53例をseries 2とすると, 「瞳孔異常」, 「除脳硬直」, 「呼吸異常」をkey-signとし, grade 1(kcy-signのいずれもふくまぬもの)からgrade 4(key-signのすべてをふくむもの)までの重症度に分類す...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 17; no. suppl; p. 136
Main Authors 山浦晶, 植村研一, 牧野博安
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1977
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ISSN0470-8105

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Summary:昭和41年6月より一貫して, 頭蓋内血腫の除去だけでは解決しえない頭蓋内圧亢進に対処する手段として早期に広範囲の減圧開頭術をとる方針をとってきたが, 昭和49年12月までの154例には生命予後のみならず社会復帰について平均50ヵ月にわたる追跡調査を行った. さらにその後の53例については生命予後について検討した. 初期の症例154例をseries 1, 後の53例をseries 2とすると, 「瞳孔異常」, 「除脳硬直」, 「呼吸異常」をkey-signとし, grade 1(kcy-signのいずれもふくまぬもの)からgrade 4(key-signのすべてをふくむもの)までの重症度に分類すると, series 1では成人のgrade 4あるいは30才以上のgrade 3は死亡ないし生存しても社会復帰に至らぬこと, 小児ではgrade 4でも生存し良好なレベルに回復するものがあることが判明した. 合併血腫の存在, 麻痺の存否はこれらの予後に大きな影響を及ぼさない. 次にseries 1で得た各gradeにおける死亡率をseries 2にあてはめると, 実際の死亡数にきわめて近い値が算出され, この重症度の有用性が証明された. Ransohoffらは急性硬膜下血腫に対しhemicraniectomyを行ったがこの方法が有効なのは脳損傷が一側に限る場合であり, 重症例のcoupおよび, contreoup損傷の存在や, 進行すれば両側性の脳の腫脹にまで至ることも考えると両側性広範囲減圧術により最大の減圧効果が期待され, 1/4の症例に行われている. 減圧開頭術の限界を, 他のいかなる治療法にもすでに反応しなくなった症例, 術中はげしい脳の膨隆のため骨弁を除去せざるをえなかったもの, あるいは減圧開頭のきわめて不十分なものを対象として論じるのは適当でない. 適切なタイミングで行われた本法は, 頭蓋内圧亢進→脳代謝障害→頭蓋内圧亢進の悪循環をたつ上で大きな役割を果たすものと思われる.
ISSN:0470-8105