RSV誘発によるマウス脳腫瘍に対する免疫学的研究

目的:腫瘍に対する生体の免疫応答は複雑であり, その免疫学的研究も十分といえないのが現状である. しかし, 近年, 腫瘍の増殖, 退縮に対して, 殺細胞性T細胞, 抑制性T細胞, マクロファージ等の関与が報告されてきている. 今回私たちはヒト脳腫瘍に対する免疫学的研究の実験モデルとして, RSV(ラウス肉腫ウィルス)誘発脳腫瘍をA/J系マウスに作成し殺細胞性T細胞の誘導と, その特異性について検討を加えた. 材料と方法:マウス脳腫瘍の作成:RSV誘発のニワトリ肉腫細胞3×10^5 /0.02mlをツベルクリン針にて, 経皮的に頭蓋内に接種し, A/J系に脳腫瘍を作成し, in vitroおよび...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 17; no. suppl; pp. 60 - 61
Main Authors 中川邦夫, 牧野博安
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1977
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ISSN0470-8105

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Summary:目的:腫瘍に対する生体の免疫応答は複雑であり, その免疫学的研究も十分といえないのが現状である. しかし, 近年, 腫瘍の増殖, 退縮に対して, 殺細胞性T細胞, 抑制性T細胞, マクロファージ等の関与が報告されてきている. 今回私たちはヒト脳腫瘍に対する免疫学的研究の実験モデルとして, RSV(ラウス肉腫ウィルス)誘発脳腫瘍をA/J系マウスに作成し殺細胞性T細胞の誘導と, その特異性について検討を加えた. 材料と方法:マウス脳腫瘍の作成:RSV誘発のニワトリ肉腫細胞3×10^5 /0.02mlをツベルクリン針にて, 経皮的に頭蓋内に接種し, A/J系に脳腫瘍を作成し, in vitroおよびin vivoにて継代培養した. 殺細胞性T細胞の誘導:Mitomycin Cで処理した腫瘍細胞を1×10^6 個皮下に接種した動物および, 腫瘍細胞を頭蓋内に接種した動物より所属リンパ節および腺細胞を採取し, 24~36時間培養し, ^^51 Crをラベルした標的腫瘍細胞と10時間マイクロタイタープレートで混合培養して, その殺細胞性を検討した. 結果および考案:リンパ節および腺細胞は, 適当な標的細胞との比で殺細胞性を示し, 皮下免疫動物ではリンパ節に, 頭蓋内接種動物では腺細胞に10%前後の殺細胞性を示した. また, このリンパ球を抗Thy1. 2抗血清で処理することにより, 殺細胞性は消失した. このことにより, この殺細胞性はT細胞によるものといえる. また, A/J系マウスの他の腫瘍である, 自然発生リンパ腫L1117に対してはまったく殺細胞性を示さず, 腫瘍特異的であった. 今後, 腫瘍特異的な免疫応答の解析が, 他の治療法も含めて脳腫瘍の治療に必要不可欠なものと考えられる.
ISSN:0470-8105