脳梗塞に関する実験的研究

目的:脳血管閉塞後に生ずる出血性梗塞の発生機序を知る目的でfluorescein angiography(FAG), carbon perfusionにより脳微小循環の変動を観察し, 組織学的所見と対比して検討を加えた. 方法:イヌで右側中大脳動脈起始部をclipping後脱血によるhypotcnsionを維持し, ついで採取血の再注入による血圧のrestorationを加えて実験的脳梗塞のモデルとし, restoration直後, 3時間後, 6時間後, 12時間後, 24時間後にそれぞれ観察を行った. 結果:Restoration直後にはFAGでcomplete ischemiaを示す部分...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 17; no. suppl; pp. 42 - 43
Main Authors 柴田尚武, 安永暁生, 小野博久, 森和夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1977
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Summary:目的:脳血管閉塞後に生ずる出血性梗塞の発生機序を知る目的でfluorescein angiography(FAG), carbon perfusionにより脳微小循環の変動を観察し, 組織学的所見と対比して検討を加えた. 方法:イヌで右側中大脳動脈起始部をclipping後脱血によるhypotcnsionを維持し, ついで採取血の再注入による血圧のrestorationを加えて実験的脳梗塞のモデルとし, restoration直後, 3時間後, 6時間後, 12時間後, 24時間後にそれぞれ観察を行った. 結果:Restoration直後にはFAGでcomplete ischemiaを示す部分の皮質内に大小さまざまのpatch状のcarbonのnon-fillingがあり, この部の毛細血管にcollapseがみられる. 3時間後にはincomplete ischemiaを示す部分の皮質内にもpatch状のnon-fillingが出現し, これらの部分に浮腫性変化がはじまる. 6時間後にはこれらのnon-fillingは融合し, MCA領域に一致して大きな虚血部を形成する. 虚血部は皮質内に止まり, 皮質下髄質の血行は保たれている. 虚血部周辺すなわち皮髄境界に拡張蛇行した穿通枝が多数出現し, 虚血部の浮腫性変化と毛細血管のcollapseの増強が著明である. 12時間後には虚血部周辺の血流はやや改善するが, 拡張蛇行した穿通枝末端からcarbonのextravasationが始まり, 漏出性出血がみられる. 24時間後には虚血部の皮髄境界に大量のcarbonのextravasationがみられる. 虚血部は壊死化し, 皮髄境界の壊死血管から破綻出血がみられる. 結論:貧血性梗塞から出血性梗塞に移行する時期はrestoration後12時間以後であった. 出血性梗塞の出血は虚血部の皮髄境界に起こり層状に進行する.
ISSN:0470-8105