SAHに伴う脳血管攣縮の成因とその治療

我々はこれまで血液ないし血液髄液艀置サンプルについて, 詳細な生化学的分析を行った結果, いわゆるlate spasmの成因としてoxyhemoglobinか, もしくはこれときわめて良く似た生化学的特性を有するpolypeptideが重要な役割を演じており, さらにhaptoglobinならびにhemoglobinhaptoglobin complexに著明な攣縮緩解作用が有ることを報告した. 今回さらに実験的に複雑成犬を用いてoxyhemoglobin, 新鮮自家血を大槽内に注入して作製したspasmに対して, haptoglobinをさらに追加注入するか, またはspasm発生後, tr...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. suppl; pp. 94 - 95
Main Authors 野中利房, 宮岡誠, 渡辺博, 千ケ崎裕夫, 石井昌三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1976
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ISSN0470-8105

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Summary:我々はこれまで血液ないし血液髄液艀置サンプルについて, 詳細な生化学的分析を行った結果, いわゆるlate spasmの成因としてoxyhemoglobinか, もしくはこれときわめて良く似た生化学的特性を有するpolypeptideが重要な役割を演じており, さらにhaptoglobinならびにhemoglobinhaptoglobin complexに著明な攣縮緩解作用が有ることを報告した. 今回さらに実験的に複雑成犬を用いてoxyhemoglobin, 新鮮自家血を大槽内に注入して作製したspasmに対して, haptoglobinをさらに追加注入するか, またはspasm発生後, transclival approachにて露出した脳底動脈に, haptoglobinをtopical applicationすることにより例外なくspasmが緩解されることを確認した. またいずれの方法により発生したspasmに対してもhaptoglobinの攣縮緩解効果は, 約10~20分で完成することが分った. また交叉熱電対法により, このようなhaptoglobinの攣縮緩解作用の形態的所見と平行して, 実際に脳循環も改善されうるという結果を得た. これらの実験的事実に基づいて, 我々は実際に脳動脈瘤の手術に際し, 手術時spasmを有する例や, 当然spasmの発生を予想しうる症例を主にhaptoglobin投与後の効果に関し検討を加え, 臨床応用を試みた. 原則として術中clipping後にhaptoglobinを十分に攣縮血管が一定時間ひたるように直接添加する方法を用い, 術中の写真撮影と術直前ならびに術後第1病目より経時的に脳血管写を施行して血管径を比較検討した. その結果術前くり返し施行した脳血管写上, 脳血管攣縮が変動しているような症例には, haptoglobinがきわめて有効(11例中10例に何らかの効果が見られた)であった. またhaptoglobin使用に原因すると思われる副作用の出現は, 1例も無かった.
ISSN:0470-8105