実験的クモ膜下出血後の頭蓋内圧の変化
クモ膜下出血症例の急性期において連続的に頭蓋内圧を記録すると, 出血直後に著しく増加した圧が, いったん下降して間もなくふたたび増大の傾向をとる. この二次性頭蓋内圧亢進の原因として, クモ膜下腔に入った血液そのものが有害作用をなし, 有形物質による髄液系の流通障害, ならびに脳腫脹の発生があげられる. イヌを用いて, 血液のいかなる成分により昇圧作用をきたすかに関して検索をなした. 注入した物質は, 全血10mlあるいはそれに相当する量のオキシヘモグロビン, メトヘモグロビン, ヘミンならびにビリルビンである. 全血を注入した場合300mmH_2 O前後の頭蓋内圧を維持し, 8時間頃より基本...
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Published in | Neurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. suppl; p. 90 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本脳神経外科学会
1976
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ISSN | 0470-8105 |
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Summary: | クモ膜下出血症例の急性期において連続的に頭蓋内圧を記録すると, 出血直後に著しく増加した圧が, いったん下降して間もなくふたたび増大の傾向をとる. この二次性頭蓋内圧亢進の原因として, クモ膜下腔に入った血液そのものが有害作用をなし, 有形物質による髄液系の流通障害, ならびに脳腫脹の発生があげられる. イヌを用いて, 血液のいかなる成分により昇圧作用をきたすかに関して検索をなした. 注入した物質は, 全血10mlあるいはそれに相当する量のオキシヘモグロビン, メトヘモグロビン, ヘミンならびにビリルビンである. 全血を注入した場合300mmH_2 O前後の頭蓋内圧を維持し, 8時間頃より基本圧に重畳する圧変動がみられた. 血漿の注入では頭蓋内圧亢進はほとんどおこらないが, 血球成分の注入では全血とほぼ類似の経過をとる. 血色素を抜いた血球ghostでは注入直後に一過性に頭蓋内圧は高まるが, 次第に正常に復する. オキシヘモグロビン1.6gの注入では, 一過性に頭蓋内圧は高まり, 8~9時間を経て基本圧に重なる急激な頭蓋内圧の変動がみられ, 次第に極期に至り動物は大抵死亡する. メトヘモグロビン1.6gの注入では, オキシヘモグロビンと同様に高まった基本圧に重なる頭蓋内圧の変動がみられた. 全血を脳脊髄液に混じて4日間incubateしたものでは. 7~8割メトヘモグロビンになっており, これの注入にて2~4時間頃より急激な頭蓋内圧の変動が出現し, 500mmH_2 O前後の頭蓋内圧を維持する. 次にヘミン, ビリルビンをそれぞれ50mg溶解し注入すると, 2時間頃より急激な頭蓋内圧の変動が出現し, 4~6時間頃には1,000mmH_2 0にも達する頭蓋内圧が測定される. 各血色素成分のクモ膜下腔注入において共通にみられる現象は, 程度に差はあるがいずれも髄膜炎の所見で, クモ膜下腕の多核白血球の浸潤, 脳底部灰白質層の空胞化, 第IV脳室のependymal cellの脱落や, 第IV脳室底血管周囲のリンパ球の浸潤が観察された. |
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ISSN: | 0470-8105 |