頸部求心系より脳幹・小脳への投射路およびその機能的意義
いわゆるtraumatic cervical syndrome例においては, 頸部へ電気刺激を加えることによって, 平滑な眼球運動の障害, 起立性平衡失調等の症状が再現される. これら頸部刺激により誘発される症状の発現機序の解明の一手段として, 頸部求心系と, 平衡機能一眼球運動に密接に関与する前庭迷路(前庭神経核)ならびに前庭小脳(片葉・小節)との間のニューロン機構の解明を試み次のような結果を得た. 実験は笑気麻酔, クロラローゼ麻酔あるいは無麻酔除脳ネコを用いて行った. (1)頭部を支える首運動ニューロンと前庭迷路との間には前庭脊髄路を介する2シナプス性の結合が存在することがわかった. (...
Saved in:
Published in | Neurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. suppl; p. 80 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本脳神経外科学会
1976
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0470-8105 |
Cover
Summary: | いわゆるtraumatic cervical syndrome例においては, 頸部へ電気刺激を加えることによって, 平滑な眼球運動の障害, 起立性平衡失調等の症状が再現される. これら頸部刺激により誘発される症状の発現機序の解明の一手段として, 頸部求心系と, 平衡機能一眼球運動に密接に関与する前庭迷路(前庭神経核)ならびに前庭小脳(片葉・小節)との間のニューロン機構の解明を試み次のような結果を得た. 実験は笑気麻酔, クロラローゼ麻酔あるいは無麻酔除脳ネコを用いて行った. (1)頭部を支える首運動ニューロンと前庭迷路との間には前庭脊髄路を介する2シナプス性の結合が存在することがわかった. (2)外転神経核ニューロンから細胞内導出を行いつつ同側の脊髄後根(あるいは頸椎関節部)に電気刺激を加えると, EPSPが若起される. 一方対側刺激の場合はIPSPが誘起され, これらシナプス後電位は前庭神経核を介して発生する. すなわち前庭眼反射系と頸部眼反射系との統合機能の一部は前庭神経核のレベルで行われていることが判明した. (3)小脳(片葉・小節)からのフィールド電位の分析ならびに細胞外電位の導出によって, 両側上頸部脊髄後根からの入力はDF・SOCPを走行路として登上線維を介してブルキンエ細胞に入る. また同側の上頚椎関節部からの信号は苔状線維-顆粒細胞-平行線維を介してブルキンエ細胞に投射することが判明した. この頸椎関節部求心系からの情報を小脳に伝達する中継核ニューロンの一部は脳幹内group Xに局在することが同定された一方前庭迷路からは別の中継核を介して情報が小脳に伝達され, 両者の統合の場と, して前庭小脳を示唆する結果を得た. 以上, 頸部深部受容器, 前庭迷路, 外眼筋核ならびに前庭小脳の4者は特定のパターンをもって密接に結合が保たれており, これら結合様式のある程度の判明は頸部から誘発される平衡失調, ならびに平滑な眼球運動の障害といった具体的な問題を理解するうえでの一助となることが期待される. |
---|---|
ISSN: | 0470-8105 |