脳腫瘍動物モデルとその免疫学的研究

MNU誘発ラットグリオーマ樹立株(RG-C_6 )の同種脳内移植実験と, この脳腫瘍ラットを用いた免疫学的機能の推移の観察をしてきた. 実験動物には10~14週令の近交系ラット(WKA)を用い, 接種する腫瘍細胞にはRG-C_6 株を用いた. 脳のcounter pressureに抗して腫瘍細胞を脳内に留めるために, TRYPTO-SOY寒天培地に均一に包理する方法を考案し, 濃度1%, 接種量3μL, 細胞数1×10^6 コで生着率89.7%となり, きわめて安定した生長曲線が得られた. 免疫学的機能の検索には, 上記至適条件で約2ヵ月で腫瘍死する実験モデルを用い, 種々の腫瘍発育時期に於け...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. suppl; pp. 64 - 65
Main Authors 祖父江八紀, 井上啓一, 皆川信, 谷村憲一, 植木幸明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1976
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ISSN0470-8105

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Summary:MNU誘発ラットグリオーマ樹立株(RG-C_6 )の同種脳内移植実験と, この脳腫瘍ラットを用いた免疫学的機能の推移の観察をしてきた. 実験動物には10~14週令の近交系ラット(WKA)を用い, 接種する腫瘍細胞にはRG-C_6 株を用いた. 脳のcounter pressureに抗して腫瘍細胞を脳内に留めるために, TRYPTO-SOY寒天培地に均一に包理する方法を考案し, 濃度1%, 接種量3μL, 細胞数1×10^6 コで生着率89.7%となり, きわめて安定した生長曲線が得られた. 免疫学的機能の検索には, 上記至適条件で約2ヵ月で腫瘍死する実験モデルを用い, 種々の腫瘍発育時期に於ける末梢リンパ球の機能を, PHA刺激に対するリンパ球幼若化現象(形態学的観察と^^3 H-thymidineの取込みによる定量的測定とによる)と標的細胞(RG-C_6 )に対する殺細胞性(microtest plate法による)およびマクロファージ遊走阻止能(Agarose droplet methodにより, モルモット腹腔浸出細胞を用いた間接法による)を指標として観察した. 腫瘍増大に伴うそれぞれの指標の変動は, 幼若比率では比較的早期に低下を示すものが多い傾向にあり, 殺細胞性は比較的晩期まで保たれ腫瘍面積比30%以上で急激に低下していく傾向があり, マクロファージ遊走能は腫瘍面積比20%以下で明らかに抑制され, さらに腫瘍が増大すると逆に促進される例が観察された. 以上のように種々のリンパ球機能は腫瘍増大に応じてそれぞれ異なった変動をみせる. すなわちこの所見は第17回日本神経学会総会で報告した個々のラットでの幼若化率と殺細胞性の解離が, 腫瘍の発育過程に応じて認められるものと判明した. この事実は, 今後種々のlymphokineの活性を分析し, 関係を知る上できわめて興味ある所見と考えられる.
ISSN:0470-8105