脳圧亢進と血圧変動

Swan-Ganzカテーテルが開発され重症患者のbedsideでの心肺機能評価が容易となった. 我々は重症頭部外傷および重症合併損傷を伴った症例の病態把握に応用し, 頭部外傷を循環動態の面より検討し, さらにいわゆるCushing responseの機序についても考察したので報告する. 対象は成人男子11例で, 重症頭部外傷は8例また重症合併損傷は6例に認めた. 死亡6例中2例は2日以内に死亡した最重症例である. 血腫除去術・減圧術は5例に施行された. Vital signsに加えて肺動脈に挿入したSwan-Ganzカテーテルより中心静脈圧CVP, 肺動脈圧PAP, 肺動脈楔入圧PCWP, 心...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. suppl; pp. 56 - 57
Main Authors 大谷光弘, 松下紀彦, 平井秀幸, 篠沢洋太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1976
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Summary:Swan-Ganzカテーテルが開発され重症患者のbedsideでの心肺機能評価が容易となった. 我々は重症頭部外傷および重症合併損傷を伴った症例の病態把握に応用し, 頭部外傷を循環動態の面より検討し, さらにいわゆるCushing responseの機序についても考察したので報告する. 対象は成人男子11例で, 重症頭部外傷は8例また重症合併損傷は6例に認めた. 死亡6例中2例は2日以内に死亡した最重症例である. 血腫除去術・減圧術は5例に施行された. Vital signsに加えて肺動脈に挿入したSwan-Ganzカテーテルより中心静脈圧CVP, 肺動脈圧PAP, 肺動脈楔入圧PCWP, 心構出量COを測定し, 特に全血管抵抗TVRを求め検討した. 脳圧亢進症状が軽度で意識が回復した症例では, TVRの上昇は一過性か軽度であった. 急性期脳圧亢進が認められるも徐々に低下した症例では急性期にCOの軽度低下とTVRの上昇が認められたが, 経過とともにCOの改善とTVRの下降傾向を示した. 急性期に死亡した最重症例では脳圧亢進が著明で血圧上昇が進行し, COは低下, TVRは急激に上昇し, 3,000dyne・sec・cm^-5 以上の高値に達した. 手術例では血腫除去・減圧術によってCOの改善とTVRの低下が認められるが, 重症例では再び上昇した. また脳圧亢進時でもhypovolemiaによって血圧上昇がほとんど認められない場合でもTVRをみると高値を示した. 本カテーテルでのmonitoringによって重症頭部外傷・合併損傷例の循環動態を検討し, その有効性を認めた. 以上の結果として, 1)頭蓋内圧亢進に伴う血圧上昇の機序は, 主としてTVRの増大によると考えられ, また, 2)頭部外傷例でTVRが高値を示すものは重症で予後不良であった. さらに症例を重ねるとともに, 実験モデルによりその機序について検討を加える予定である.
ISSN:0470-8105