脳腫瘍患者の免疫能

癌の治療は近年発達した早期発見法, 早期外科的療法, それに引き続く各種抗癌化学療法, 各種工夫をこらした放射線療法の開発などにより飛躍的に進歩したが, 残念ながら今なお癌というと死の宣告に等しい言葉である. しかしきわめて稀であるが自然治癒した癌の報告4)が見られ, これら自然治癒現象は生体の癌に対する防衛機構-免疫が関与している可能性を示唆している23)31). またヒト癌においても自家の場において, 腫瘍特異抗原の証明がなされつつある1)8)33). 腫瘍が免疫監視機構をうまく逃がれ, なぜ増殖するのかは不明であるが, 腫瘍特異抗原に対する抗体を増強させ, 癌の増殖を抑制し, さらに消退...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. 4; pp. 337 - 347
Main Authors 清水隆, 鬼頭健一, 山崎直美, 久保長生, 喜多村孝一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1976
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Summary:癌の治療は近年発達した早期発見法, 早期外科的療法, それに引き続く各種抗癌化学療法, 各種工夫をこらした放射線療法の開発などにより飛躍的に進歩したが, 残念ながら今なお癌というと死の宣告に等しい言葉である. しかしきわめて稀であるが自然治癒した癌の報告4)が見られ, これら自然治癒現象は生体の癌に対する防衛機構-免疫が関与している可能性を示唆している23)31). またヒト癌においても自家の場において, 腫瘍特異抗原の証明がなされつつある1)8)33). 腫瘍が免疫監視機構をうまく逃がれ, なぜ増殖するのかは不明であるが, 腫瘍特異抗原に対する抗体を増強させ, 癌の増殖を抑制し, さらに消退させ, 終局的には腫瘍の発生予防にまでもっていけるのではとの期待で研究が進められている. 近年腫瘍細胞に対し抗腫瘍性を有するものは細胞性免疫であり, 体液性抗体はむしろ阻止抗体となっているのではないかと推測されてきた. しかし研究の発展とともに細胞性免疫と体液性免液はきわめて複雑な関係にあり, 従来のように抗腫瘍性は細胞性免疫であるとは簡単に言いがたくなってきた6)9).
ISSN:0470-8105