脳動脈瘤患者における下垂体機能異常

われわれはすでに前交通動脈瘤の患者で術前術後に施行した下垂体機能検査上異常を呈する症例を報告したが, 新たにトルコ鞍内に発育した内頸動脈瘤にともなって末端肥大症を呈した症例を経験した. これらは脳動脈瘤の発育部位や手術操作の視床下部-下垂体への影響を示すものと考え, 視床下部-下垂体周辺に発育した脳動脈瘤(第I群)16例, その他の部位の脳動脈瘤(第II群)15例につき下垂体機能検査をinsulin, TRH, LH・RHの同時負荷により施行した. 第I群では全例に術前または術後に, なんらかの異常値を認めており, GH異常9例, TSH異常7例, LH異常9例, FSH異常9例であった. ま...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 15; no. suppl; p. 149
Main Authors 神尾正己, 宇都宮隆一, 真田洋一, 鈴木敬, 中村紀夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1975
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ISSN0470-8105

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Summary:われわれはすでに前交通動脈瘤の患者で術前術後に施行した下垂体機能検査上異常を呈する症例を報告したが, 新たにトルコ鞍内に発育した内頸動脈瘤にともなって末端肥大症を呈した症例を経験した. これらは脳動脈瘤の発育部位や手術操作の視床下部-下垂体への影響を示すものと考え, 視床下部-下垂体周辺に発育した脳動脈瘤(第I群)16例, その他の部位の脳動脈瘤(第II群)15例につき下垂体機能検査をinsulin, TRH, LH・RHの同時負荷により施行した. 第I群では全例に術前または術後に, なんらかの異常値を認めており, GH異常9例, TSH異常7例, LH異常9例, FSH異常9例であった. またTSHの異常は改善される傾向をまたLH, FSHの異常は増加する傾向を認めた. 第II群では各ホルモンで異常値を示す症例を認めるが, TSHで術後軽度異常例が増加した以外にはむしろ改善傾向を認めた. 臨床上はっきりした症状が出現したのは第I群中のトルコ鞍内動脈瘤にともなった末端肥大症例だけである. この症例ではGHは20ng/ml前後の高値で, 諸負荷に対して低反応であった. 脳動脈瘤患者においては多くはsubclinicalながらかなり高率に下垂体機能異常を来たしている症例が存在し, かつ視床下部-下垂体周辺に発育したものにその頻度が高い傾向である. これは脳動脈瘤患者における下垂体機能異常には種々の原因が考えられるが, その一因として脳動脈瘤の発育部位, 大きさ, 発育方向が考慮されるべきことを示している.
ISSN:0470-8105