急性頭蓋内圧亢進時における頭蓋内圧連続記録の意義

われわれは急性頭蓋内圧亢進を示す症例に, 頭蓋内圧の連続記録を行なっている. 目的は頭蓋内圧の高さと圧動態を知ることにより, いつ, どのような方法で, いかに効果的に頭蓋内圧をコントロールするかにある. 方法:急性頭蓋内圧亢進を示した42例に, 頭蓋内圧の連続記録を行なった. 症例の内訳は脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血20例, 高血圧性脳出血11例, 頭部外傷11例である. 頭蓋内圧の記録は32例に脳室穿刺により, 10例に腰部クモ膜下穿刺により行なった. 大腿動脈より誘導して全身血圧を記録し, また差動増幅回路を用いて, 脳灌流圧を測定した. 結果:脳動脈瘤破裂後の急性期の症例において,...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 15; no. suppl; p. 56
Main Authors 林実, 乙川忍, 藤井博之, 北野哲男, 古林秀則, 山本信二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1975
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ISSN0470-8105

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Summary:われわれは急性頭蓋内圧亢進を示す症例に, 頭蓋内圧の連続記録を行なっている. 目的は頭蓋内圧の高さと圧動態を知ることにより, いつ, どのような方法で, いかに効果的に頭蓋内圧をコントロールするかにある. 方法:急性頭蓋内圧亢進を示した42例に, 頭蓋内圧の連続記録を行なった. 症例の内訳は脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血20例, 高血圧性脳出血11例, 頭部外傷11例である. 頭蓋内圧の記録は32例に脳室穿刺により, 10例に腰部クモ膜下穿刺により行なった. 大腿動脈より誘導して全身血圧を記録し, また差動増幅回路を用いて, 脳灌流圧を測定した. 結果:脳動脈瘤破裂後の急性期の症例において, 重症度が高いほど, 高い頭蓋内圧を示した. このため, 持続脳室ドレナージによる減圧処置が有効と考えられるが, その場合, 頭蓋内圧亢進状態そのものが脳血流を低下させ, 止血機転として働いていることが考えられるため注意が必要で, われわれは脳灌流圧を測定し, その値が70~80mmHgとなるよう頭蓋内圧を調節するようにしている. 高血圧性脳出血の症例では, 血腫除去後にも, 相当期間, 頭蓋内圧亢進の続く症例が多く, このような場合, 頭蓋内圧における基本圧が500~600mmH_2 O をこえると意識レベルの低下がみられた. その対策として持続脳室ドレネージによる減圧処置が有効であり, この場合, 頭蓋内圧が300~500mmH_2 Oの中等度亢進の時期にこれを行なうことが有意義と考えられた. 頭部外傷例でもとくに急性硬膜下血腫は, 血腫除去後においても頭蓋内圧の再上昇をみるものが多い. このためわれわれは頭蓋内圧の連続記録を行なって, 300~500mmH_2 Oの中等度亢進がみられたら, ただちにドレナージを行なうようにしている. 結論:急性頭蓋内圧亢進を示す患者の術前術後に頭蓋内圧を連続記録することは治療の指針を得, 予後を判定するため有意義である.
ISSN:0470-8105