脳腫瘍患者の免疫機構および脳腫瘍の免疫学的診断法

第29回本学会総会より脳腫瘍の免疫について報告してきた. 今回症例も増え, 脳腫瘍患者の免疫能について体液性免疫と細胞性免疫の両面より, かなり明確にしえたので報告したい. またわれわれの開発した患者血清と髄液を用いた脳腫瘍の免疫学的診断法は症例を重ねることにより, 簡便でしかも鋭敏で臨床的に非常に有用であるので併せて報告したい. A)脳腫瘍患者の免疫能について:1)体液性免疫面より……Glioma患者血清中には一定した高力価の腫瘍特異抗体を検出した. この反応の腫瘍特異抗原は腫瘍細胞膜表面に存在する. またgliomaに対する血清特異抗体はIgM分画中に存在することが強く示唆される. 転移性...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 15; no. suppl; pp. 27 - 28
Main Authors 清水隆, 鬼頭健一, 山崎直美, 久保長生, 喜多村孝一, 高倉公朋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1975
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Summary:第29回本学会総会より脳腫瘍の免疫について報告してきた. 今回症例も増え, 脳腫瘍患者の免疫能について体液性免疫と細胞性免疫の両面より, かなり明確にしえたので報告したい. またわれわれの開発した患者血清と髄液を用いた脳腫瘍の免疫学的診断法は症例を重ねることにより, 簡便でしかも鋭敏で臨床的に非常に有用であるので併せて報告したい. A)脳腫瘍患者の免疫能について:1)体液性免疫面より……Glioma患者血清中には一定した高力価の腫瘍特異抗体を検出した. この反応の腫瘍特異抗原は腫瘍細胞膜表面に存在する. またgliomaに対する血清特異抗体はIgM分画中に存在することが強く示唆される. 転移性脳腫瘍患者血清の半数がIgG, IgM, IgA, βIC/IAの低値を示したが原発性脳腫瘍患者群の血清では一定の傾向が示されなかった. 2)細胞性免疫面より……悪性glioma患者はリンパ球数1, 800/立方ミリメートル以下が80%およびツベルクリン反応5×5mm以下が89%で, 転移性腫瘍患者では各々75%で細胞性免疫能の低下を示した. 手術時剔出腫瘍組織のリンパ球浸潤度合は転移性腫瘍, 髄膜腫, gliomaの順で体液性抗体との解離現象が見られた. 腫瘍細胞と患者リンパ球との混合培養ではリンパ球の抗腫瘍性が明らかに認められたが, 患者血清との混合培養では抗腫瘍性は明らかでなかった. B)脳腫瘍の免疫学的診断法:脳腫瘍の補助診断法として髄液のdisc電気泳動, 免疫電気泳動では脳腫瘍の特異的patternは得られず, 労多くして, 有効な診断法にはならない. 患者髄液(1mlで十分)と血清(0.5ml)を用いた免疫粘着反応による免疫学的診断法は簡便できわめて検出率が高い. 本法が陽性で髄膜炎が否定されればgliomaの可能性が高い, 陰性で明らかに占拠性病変が疑われる時はglioma以外のものが考えられる.
ISSN:0470-8105