頸髄血管の血流方向について

目的:脊髄圧迫性疾患, 脊髄血管障害において, その臨床像の機序に関し脊髄の血行動態が関与することが推察されている. 今回は, 実験的に頸髄の血流方向について検討することを目的とした. 実験方法:体重8~14kgの雑成犬を使用した. nembutal麻酔, 自然呼吸下に頸髄前面を2髄節以上露出した. KIFA redカテーテルを大動脈弓まで挿入し, インジゴカルミン注射液を10ml急速注入し, 血流方向を観察した. 記録には, 16mm映写機を使用し, 後に分析した. 血管の型態学的観察は, 死亡後直ちに脊髄を摘出し, 10%formalin溶液にて固定後手術用microscopeを使用し,...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 13; no. suppl; pp. 146 - 147
Main Authors 三森研自, 佐藤正治, 都留美都雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1973
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ISSN0470-8105

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Summary:目的:脊髄圧迫性疾患, 脊髄血管障害において, その臨床像の機序に関し脊髄の血行動態が関与することが推察されている. 今回は, 実験的に頸髄の血流方向について検討することを目的とした. 実験方法:体重8~14kgの雑成犬を使用した. nembutal麻酔, 自然呼吸下に頸髄前面を2髄節以上露出した. KIFA redカテーテルを大動脈弓まで挿入し, インジゴカルミン注射液を10ml急速注入し, 血流方向を観察した. 記録には, 16mm映写機を使用し, 後に分析した. 血管の型態学的観察は, 死亡後直ちに脊髄を摘出し, 10%formalin溶液にて固定後手術用microscopeを使用し, 行った. 結果:頸髄の血管形態をみると, 前根動脈は全髄節に一対ずつあり, これらは, それぞれ前脊髄動脈と吻合していた. 血管の太さをみると, C_3 前根動脈および, それより頭側の前脊髄動脈は, それぞれ平均1.2mmあり, 他のレベルのそれらはほぼ一様であり, 平均0.2mmであった. 前根動脈と前脊髄動脈の吻合形態をみると二つの形に分類することができた. 各髄節レベルの前脊髄動脈の連続性をみると, 完全に連続しているが80%にみられ, 髄節中ほどで中断しているのが20%にみられた. 各髄節毎の前脊髄動脈の血流方向をみると, C_4 前根動脈より頭側の前脊髄動脈の血流は一様に上行していた. C_4 ~C_5 間の血流方向は, 尾側から上行し, 頭側から部分的に下行し髄節中央で合流する形と, 尾側から上行のみ示す形が混在し, C_5 より尾側の前脊髄動脈の血流方向は, 合流形が多い傾向を示した. 下行のみ示す形はいずれの髄節にも認めなかった. 部分的に血流の下行するのは, 血管の太さには無関係であり, 前根動脈と前脊髄動脈とのなす角度が90°以上のときのみ認められた. 結論:発生学的並びに形態学的, 加えて, 血流の観察からみて, 基本的に, 各髄節は前根動脈によって養われている.
ISSN:0470-8105