4. ALA-PDTにおける二波長同時照射型LEDのPDT効果

【緒言】光線力学的療法(PDT)とは, 疫病組織に集積した光感受性物質の光励起により発生する一重項酸素の強い細胞毒性を利用した治療法である. PDTは, 従来の癌治療である外科的切除, 放射線治療および化学的治療と比較して患者に対する侵襲性が少なく, 患者の生活の質(QOL)を考慮した癌治療法として注目されている. PDTの光源の一つにLEDがある. LEDはエレクトロルミネッセンス(EL)効果を利用した半導体素子であり, 点灯寿命が長く, 装置の小型化・軽量化が可能であり, 発熱量が少なくて光変換効率が良いため省電力化が可能であるなどの特長を持つ. しかし, これまでのLEDは放射強度が低い...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 29; no. 2; p. 197
Main Authors 竹井靖, 古曽部俊之, 邸雪鵬, 川島徳道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本レーザー医学会 2008
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Summary:【緒言】光線力学的療法(PDT)とは, 疫病組織に集積した光感受性物質の光励起により発生する一重項酸素の強い細胞毒性を利用した治療法である. PDTは, 従来の癌治療である外科的切除, 放射線治療および化学的治療と比較して患者に対する侵襲性が少なく, 患者の生活の質(QOL)を考慮した癌治療法として注目されている. PDTの光源の一つにLEDがある. LEDはエレクトロルミネッセンス(EL)効果を利用した半導体素子であり, 点灯寿命が長く, 装置の小型化・軽量化が可能であり, 発熱量が少なくて光変換効率が良いため省電力化が可能であるなどの特長を持つ. しかし, これまでのLEDは放射強度が低いため, 十分なPDT効果を得るには, 長時間の光照射が必要であった. そこで, 本研究では, 5-aminolevulinic acid(ALA)を用いたPDTにおけるLEDによるPDT効果の向上を目的に, 放射光の波長領域が異なる2種類のLEDを用いて, 種々の放射照度比(ただし, 全放射照度は一定)で光照射した際のPDT効果について検討した. 【実験】使用したLEDは, Royal Blue(λmax=440nm), Blue(λmax=475nm), Green(λmax=530nm)およびRed(λmax=635nm)を用いた. 10%のウシ胎児血清を加えたRPMI-1640培地で継代したヒト組織球性リンパ腫U-937を5×105cells/mLに調整した. 濃度10wt%のALA生理食塩水溶液を6μL投与後, 37℃でCO2インキュベータにて3時間培養した. その後, 2種類のLEDを用いて, 全放射照度を4mW/cm2に固定し, 放射照度比を変えながら4時間光照射(照射エネルギー:54J/cm2)し, そのときのU-937の生存率を生死細胞判定装置(Vi-Cell, ベックマンコールター社製)を用いて測定した. 【結果】各LEDを用いて単独光照射したとき, いずれのLEDにおいても生存率は減少し, PDT効果が確認された. また, RedとBlue, RedとGreenあるいはRedとRoyal Blueを用いて, 放射強度比1:1(全放射照度:4mW/cm2)で同時に光照射したときの細胞生存率を測定したところ, 2種類のLEDを同時光照射したときのPDT効果は各LED単独光照射したときのPDT効果より大きくなった. さらに, RedとBlue, RedとGreenあるいはRedとRoyal Blueを用いた2種類のLEDの混合比率を変化させて同時光照射した. その結果, 放射強度比1:1(全放射照度:4m W/cm2)で同時に光照射したときに最も細胞生存率が低くなり, PDT効果が最も高いことが明らかとなった.
ISSN:0288-6200