W3-6 インドシアニングリーンを用いた光線力学的温熱療法(PDHT)により著効を示した犬の悪性肉腫2例

1.はじめに:インドシアニングリーン(ICG)は検査試薬として医学・獣医学領域で広く使用されている物質である.一方,この物質は800nm付近に吸収波長を有し,同波長の光照射で発熱することが知られている.さらに昨年,照射波長に関係ないPDTを示すことが明らかとなった.今回演者らは,ICGの温熱とPDTの両効果を期待して,2例の犬悪性肉腫にICG局注後,近赤外線光を外部より照射(以下,光線力学的温熱療法:PDHTと呼ぶ)し,極めて良好な成績を得たのでその概要を報告する. 2.症例:<症例1>犬,ゴールデン・レトリバー,8歳,雄,40.2kg.左臀部に小児頭大の腫瘤が発生したため,外科的...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 28; no. 2; p. 218
Main Authors 岡本芳晴, 岡村泰彦, 柄 武志, 南 三郎, 小川信彦, 石井宏志, 南 直秀, 松田和義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本レーザー医学会 2007
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ISSN0288-6200

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Summary:1.はじめに:インドシアニングリーン(ICG)は検査試薬として医学・獣医学領域で広く使用されている物質である.一方,この物質は800nm付近に吸収波長を有し,同波長の光照射で発熱することが知られている.さらに昨年,照射波長に関係ないPDTを示すことが明らかとなった.今回演者らは,ICGの温熱とPDTの両効果を期待して,2例の犬悪性肉腫にICG局注後,近赤外線光を外部より照射(以下,光線力学的温熱療法:PDHTと呼ぶ)し,極めて良好な成績を得たのでその概要を報告する. 2.症例:<症例1>犬,ゴールデン・レトリバー,8歳,雄,40.2kg.左臀部に小児頭大の腫瘤が発生したため,外科的切除を実施した.病理組織学的には横紋筋肉腫と診断された.その後再発を繰り返し,4ヶ月間に11回の摘出手術を受けた.<症例2>犬,アメリカン・コッカー・スパニエル,10歳,雄,15kg.右側手根部に腫瘤が発生し,内科療法を実施するも腫瘤は漸次腫大し,約2週間で直径約8cm大の表面全域に潰瘍を伴う腫瘤に発達した.病理組織学的には軟部組織肉腫と診断された.オーナーより,患肢を温存する治療法を希望された. 3.治療および経過:<症例1>初診時,患部は直径約15cmの皮膚欠損を伴い,腫瘍が増殖していた.再度病変部を切除後,創床部にICGを局注して患部に光照射(スーパーライザー(東京医研)を改造)し,照射部位の温度を41-42℃まで加温し,20分間維持した.同様の治療を1週間間隔で計4回実施した.2回目の治療以降に患部は急速に治癒がみられてきた.PDHT治療開始後2週間目に患部を生検した結果,腫瘍の再発はみられなかった.<症例2>超音波乳化吸引装置により腫瘍を除去し,症例1と同様にPDHTを実施した.その後1-2週間隔でPDHTを実施した.2回目の治療以降,患部の腫脹は消失し,上皮化がみられてきた.約3ヶ月で患部は完全に治癒し,その後患部の再発はみられていない.2症例ともPDHTによる皮膚の潰瘍等の副作用はみられなかった.4.考察:今回の結果より,ICGを用いたPDHTは重大な副作用もなく腫瘍の新しい治療法としての可能性が示唆された.今後,この治療法についての基礎的検討並びに臨床例を蓄積していき,治療法の確立を目指していきたいと考えている.
ISSN:0288-6200