11.肺癌手術後の肺門部肺癌に対するPDTの検討

「はじめに」肺の扁平上皮癌は高齢者で高度喫煙者に多く, 肺気腫の合併率が高い. さらに, 重複癌や多発癌の発生が多く, 第2癌以降の治療に難渋することが多い. 特に, 第2癌以降の病変に対しては機能温存を考慮した治療が望まれる. 肺門部早期肺癌の治療戦略として, 機能温存を考慮に入れた光線力学的治療は, 術後の機能低下が少なく, 侵襲の少ない治療法としての地位を確立しつつある. 今回は, 肺癌術後に発生した肺門部肺癌に対して光線力学的治療を施行した3例について検討を行った. 「症例1」57才男性. 1998年7月, 左肺下葉の扁平上皮癌に対して左肺下葉切除後, 2004年9月の気管支鏡にて左B...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 27; no. 2; pp. 134 - 135
Main Authors 土田敬明, 金子昌弘, 小林寿光, 菅原真人, 松永健志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本レーザー医学会 2006
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Summary:「はじめに」肺の扁平上皮癌は高齢者で高度喫煙者に多く, 肺気腫の合併率が高い. さらに, 重複癌や多発癌の発生が多く, 第2癌以降の治療に難渋することが多い. 特に, 第2癌以降の病変に対しては機能温存を考慮した治療が望まれる. 肺門部早期肺癌の治療戦略として, 機能温存を考慮に入れた光線力学的治療は, 術後の機能低下が少なく, 侵襲の少ない治療法としての地位を確立しつつある. 今回は, 肺癌術後に発生した肺門部肺癌に対して光線力学的治療を施行した3例について検討を行った. 「症例1」57才男性. 1998年7月, 左肺下葉の扁平上皮癌に対して左肺下葉切除後, 2004年9月の気管支鏡にて左B3に新病変を指摘され, 生検にて扁平上皮癌の診断を得た. 低肺機能のため手術や放射線による治療は困難と判断し, 2004年11月にフォトフリンおよびエキシマダイレーザーによる光線力学的治療を施行. 現在CR中である. 「症例2」75才男性. 1996年左上葉気管支の扁平上皮癌に対して左肺スリーブ上葉切除後, 1998年に吻合部再発あり, 左残肺摘出術および気管分岐部形成術施行. その後2度の吻合部再発に対して放射線の外照射および腔内照射を行いCRを得た. 2005年2月の気管支鏡で気管に新病変を2ヵ所指摘され, 生検にて扁平上皮癌の診断を得た. 放射線治療は既に2回行っており適応なく, 2005年3月にフォトフリンおよびエキシマダイレーザーによる光線力学的治療を施行. 現在CR中であるが, 治療部より口側に新病変がさらに3ヵ所出現し, また, 食道早期癌も発見された. 食道早期癌の治療は他院で行っているため, 入院期間短縮のためこれらの新病変に対しては高出力半導体レーザーによる焼灼を行った. 1ヵ所は喉頭の病変のため, レーザー焼灼も困難であり, 放射線治療を行っている. 「症例3」76才男性. 2004年9月, 右上葉気管支の扁平上皮癌に対して右肺スリーブ上葉切除後, 2005年8月の気管支鏡にて左主気管支に新病変を指摘され, 生検にて扁平上皮癌の診断を得た. 低肺機能のため手術や放射線による治療は困難と判断し, 2005年10月にフォトフリンおよびエキシマダイレーザーによる光線力学的治療を施行. 光線力学的治療の際に気管に2ヵ所新病変を確認し, 合計3ヵ所に対して光線力学的治療を行った. 治療後の気管支鏡で一時病変の縮小および消失を確認したが, 2006年1月の気管支鏡検査で3ヵ所とも再発を確認した. 「まとめ」肺の扁平上皮癌は高度喫煙者に発生し, 低肺機能であることが多い上多発癌や重複癌の発生が多く, 初発の病変の手術に成功しても第2癌以降の治療が困難であるが, 光線力学的治療はこれらの肺癌手術後の肺門部肺癌の治療における選択枝として重要であると考えられる. しかし, 肺癌手術後の肺門部肺癌は主気管支や気管の壁に発生することも多く, また, 気管気管支の走行が変形しており, レーザーを垂直に近く照射することが困難な場合も少なくない. 今後, 光線力学的治療の適応として肺癌術後の肺門部癌が多くを占めることが予想されるが, 側壁への照射方法を確立する必要があると考えられる.
ISSN:0288-6200