10. 当院における輸血後鉄過剰症の現況
【目的】再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの骨髄不全症候群では, 長期間にわたって赤血球輸血を繰り返さざるを得ない場合が多い. 生体では鉄の排泄ルートがないため, 輸血で体内に入った鉄は心臓・肝臓・内分泌器官などに沈着し, 臓器障害をきたす. 近年, 経口鉄キレート剤が開発され, 鉄過剰症に対する治療が可能となった. 今回, 当院における輸血後鉄過剰症の現況について検討した. 【対象および方法】当院で年間20単位以上の赤血球輸血を受けた患者を対象とした. 測定されていた血清フェリチン値と輸血量および臓器障害との関連について検討した. 【結果】手術などで一時的に大量輸血を受けた患者を除くと,...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 58; no. 1; p. 88 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血・細胞治療学会
2012
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ISSN | 1881-3011 |
Cover
Summary: | 【目的】再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの骨髄不全症候群では, 長期間にわたって赤血球輸血を繰り返さざるを得ない場合が多い. 生体では鉄の排泄ルートがないため, 輸血で体内に入った鉄は心臓・肝臓・内分泌器官などに沈着し, 臓器障害をきたす. 近年, 経口鉄キレート剤が開発され, 鉄過剰症に対する治療が可能となった. 今回, 当院における輸血後鉄過剰症の現況について検討した. 【対象および方法】当院で年間20単位以上の赤血球輸血を受けた患者を対象とした. 測定されていた血清フェリチン値と輸血量および臓器障害との関連について検討した. 【結果】手術などで一時的に大量輸血を受けた患者を除くと, 当院において20単位以上の赤血球輸血を受けていた患者はすべて血液内科の患者であった. 原疾患は白血病, 骨髄異形成症候群, 悪性リンパ腫, 多発性骨髄腫などの造血器腫瘍と再生不良性貧血であった. 測定されていた患者の70%の血清フェリチン値が1000ng/mlを越えていた. 【考察】輸血後鉄過剰症のガイドでは, 総赤血球輸血量40単位以上を鉄キレート療法の開始基準としているが, 実際にはさらに少ない輸血量で血清フェリチン値は1000ng/mlを越えており, 早期の治療開始が望ましいと考えられた. |
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ISSN: | 1881-3011 |