14. 高齢者の手術における同種血輸血回避の工夫-手術前1回の自己血貯血と希釈式自己血輸血の併用
【はじめに】自己血輸血は同種血輸血による感染症の伝搬や免疫学的副作用を回避することができるが, 術前の短期間に複数回の貯血を行うことは, 高齢者にとって大きな負担となる. 当院では, 予想出血量が800ml以上の術式に対して貯血回数を1回とし, 希釈式を併用する方法が多く実施されている. 今回, 貯血式・希釈式自己血輸血併用例における同種血輸血状況を調査した. 【対象】2009年4月から2011年3月までの2年間に当院で術前に自己血を貯血した172例のうち, 65歳以上の高齢者の貯血例83例を対象とした. 術式, 希釈式自己血輸血併用の有無, 同種血輸血の有無, 手術時の出血量等について検討し...
Saved in:
Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 58; no. 1; pp. 69 - 70 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血・細胞治療学会
2012
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1881-3011 |
Cover
Summary: | 【はじめに】自己血輸血は同種血輸血による感染症の伝搬や免疫学的副作用を回避することができるが, 術前の短期間に複数回の貯血を行うことは, 高齢者にとって大きな負担となる. 当院では, 予想出血量が800ml以上の術式に対して貯血回数を1回とし, 希釈式を併用する方法が多く実施されている. 今回, 貯血式・希釈式自己血輸血併用例における同種血輸血状況を調査した. 【対象】2009年4月から2011年3月までの2年間に当院で術前に自己血を貯血した172例のうち, 65歳以上の高齢者の貯血例83例を対象とした. 術式, 希釈式自己血輸血併用の有無, 同種血輸血の有無, 手術時の出血量等について検討した. 【結果・考察】貯血が実施された83例のうち, 希釈式自己血輸血併用例は72例(86.7%)であった. 併用例の3例に同種血が輸血され, 同種血輸血回避率は96%であった. 前立腺全摘除術の併用例では62例中, 同種血輸血は術中大量出血(3620ml)の1例のみであった. 腎部分切除術と腎全摘術では, 予想出血量に比し実出血量が少なく, 希釈式を併用することは過剰採血になる傾向がみられた. 膀胱全摘除術は実出血量が多いため, 貯血採血量と希釈採血量の再検討が同種血輸血回避のために必要であると考えられた. 【まとめ】高齢者において貯血式と希釈式自己血輸血を併用することは, 少ない術前負担で同種血輸血を回避するのに有効である. 今後輸血部では診療科との連携をより密にして, 安全な輸血医療の提供に努めたい. |
---|---|
ISSN: | 1881-3011 |