17. 鉄キレート剤デフェラシロクスにより定期的な輸血が不要となった当院症例

我々は, 長期にわたり定期的な輸血療法を必要としたが, 鉄キレート剤デフェラシロクス投与開始後より輸血間隔が延び, 最終的には定期的な輸血が必要でない状態まで回復した2症例を経験した. 症例1は80歳代男性で, S状結腸癌の手術を受けフォローされていたが汎血球減少が出現し再生不良性貧血と診断された. シクロスポリン200mg/day投与で効果不十分であり, 週一回の赤血球輸血2単位および血小板輸血10単位で全身状態を良好に保つことができていた. 高フェリチン血症に対しデフェラシロクス内服を開始したところ, その効果により輸血不要の状態まで回復した. 症例2は60歳代女性で, 多発性骨髄腫に対し...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 57; no. 1; p. 81
Main Authors 武本重毅, Ratiorn Pornkuna, 樋口悠介, 井上佳子, 塚本敦子, 榮達智, 原田奈穂子, 鶴田敏久, 長倉祥一, 日高道弘, 清川哲志, 河野文夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2011
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ISSN1881-3011

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Summary:我々は, 長期にわたり定期的な輸血療法を必要としたが, 鉄キレート剤デフェラシロクス投与開始後より輸血間隔が延び, 最終的には定期的な輸血が必要でない状態まで回復した2症例を経験した. 症例1は80歳代男性で, S状結腸癌の手術を受けフォローされていたが汎血球減少が出現し再生不良性貧血と診断された. シクロスポリン200mg/day投与で効果不十分であり, 週一回の赤血球輸血2単位および血小板輸血10単位で全身状態を良好に保つことができていた. 高フェリチン血症に対しデフェラシロクス内服を開始したところ, その効果により輸血不要の状態まで回復した. 症例2は60歳代女性で, 多発性骨髄腫に対してVAD療法3コース施行し, 自家末梢血幹細胞移植を施行した. その後血球が回復しないため, 外来にて輸血療法(PCは1週から10日に1回, RCC-LRは2週に1回程度)を続けていた. 高フェリチン血症に対しデフェラシロクス内服を開始したところ, 移植から2年近くを経て輸血間隔が延長していった. 重症の再生不良性貧血患者や造血幹細胞移植患者にとって, 輸血療法は欠かすことのできない重要な支持療法である. しかし長期にわたる赤血球輸血は鉄過剰症の原因となり, 心臓, 肝臓, 膵臓などに障害を起こす. さらに骨髄不全を起こす場合があり, 造血器疾患に対する治療を困難なものにする. 我々の経験した2症例が輸血療法非依存性となったことにより, 今後もデフェラシロクスによる造血能回復効果が期待される.
ISSN:1881-3011