15. 生体肺移植術後にB型急性肝炎を発症した症例

【緒言】同種輸血によるB型肝炎ウイルス(HBV)感染事例は, 核酸増幅検査(NAT)導入後の今日も, 年間10数件発生している. また近年, 造血器腫瘍に対する免疫抑制・化学療法後のHBVの再活性化が問題となっている. 今回われわれは, 生体肺移植術施行後のB型肝炎発症例を経験したので報告する. 【症例】45歳, 女性. 肺胞蛋白症による慢性呼吸不全が進行するため, 2008年4月本院にて, 2名のドナーより両側生体肺移植術を施行した. 周術期よりタクロリムス, ミコフェノール酸モフェチルによる免疫抑制療法を継続実施していた. 2009年11月よりトランスアミナーゼの上昇をみとめ, 精査により...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 57; no. 1; p. 80
Main Authors 長井一浩, 嶋田夏紀, 上領章久, 深堀由紀子, 上平憲, 土橋佳子, 有吉紅也, 永安武, 松崎寿久, 市川辰樹, 中尾一彦, 寺澤崇, 山下隆司, 関根一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2011
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ISSN1881-3011

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Summary:【緒言】同種輸血によるB型肝炎ウイルス(HBV)感染事例は, 核酸増幅検査(NAT)導入後の今日も, 年間10数件発生している. また近年, 造血器腫瘍に対する免疫抑制・化学療法後のHBVの再活性化が問題となっている. 今回われわれは, 生体肺移植術施行後のB型肝炎発症例を経験したので報告する. 【症例】45歳, 女性. 肺胞蛋白症による慢性呼吸不全が進行するため, 2008年4月本院にて, 2名のドナーより両側生体肺移植術を施行した. 周術期よりタクロリムス, ミコフェノール酸モフェチルによる免疫抑制療法を継続実施していた. 2009年11月よりトランスアミナーゼの上昇をみとめ, 精査により2010年1月HBs抗原, HBe抗原, HBc抗体およびHBV-DNAの陽性が確認されたため, B型急性肝炎の診断の元, エンテカビルによる治療が開始された. 患者は術前, HBs抗原, HBe抗原, HBc抗体いずれも陰性であり, HBV感染既往は認められなかった. 移植ドナーについては, 1名はHBs抗原, HBc抗体共に陰性で, もう1名はHBs抗原陰性, HBc抗体陽性, HBV-DNA陰性であり感染既往が示唆された. 輸血用血液製剤は, 照射赤血球濃厚液(IrRCC)LR2を32本, 新鮮凍結血漿FFP5を6本, 照射濃厚血小板10単位を3本使用した. これら全ての個別NATは陰性であった. しかし, IrRCC-LR2のドナーのうち9件で献血の再来がなく, またIrRCC-LR2とFFP5の各1本ずつがHBV既往献血者由来製剤であった. 【考察】本症例のHBV感染原因は特定できていないが, HBV既往献血者由来製剤あるいは再来献血のない9件のドナーのWindow期製剤による可能性が残されている. 臓器移植時の免疫抑制状態において輸血を実施する場合, 肝炎ウイルス感染のより厳重なモニターを必要とする. また, HBV既往献血者由来製剤の使用は慎重を期す必要がある.
ISSN:1881-3011