7. 同種骨髄移植におけるIL-17プロモーター遺伝子多型の機能的役割

【目的】IL-17は, 先天・獲得免疫の媒介や感染防御, 自己免疫疾患発症など多彩な機能を有する調整性サイトカインである. IL-17プロモーター領域のSNPと, 関節リウマチや潰瘍性大腸炎などGVHD類似疾患発症との関連に着目し, 同種骨髄移植におけるSNPの影響と機能的役割を解析した. 【対象と方法】骨髄バンクを通じ, HLA一致非血縁者間骨髄移植を受けた前移植歴の無い血液がん患者とそのドナーのDNAと臨床情報を収集した(第1・第2コホート各360・150ペア). 患者・ドナーIL-17SNP(rs2275913, G197A)は, TaqMan SNP遺伝子多型解析法で決定. 健常人49...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 57; no. 1; p. 58
Main Authors 元橋由紀, Jルイスエスピノーザ, 山田佳代子, 山田真由, 中尾眞二, 大竹茂樹, 高見昭良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2011
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ISSN1881-3011

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Summary:【目的】IL-17は, 先天・獲得免疫の媒介や感染防御, 自己免疫疾患発症など多彩な機能を有する調整性サイトカインである. IL-17プロモーター領域のSNPと, 関節リウマチや潰瘍性大腸炎などGVHD類似疾患発症との関連に着目し, 同種骨髄移植におけるSNPの影響と機能的役割を解析した. 【対象と方法】骨髄バンクを通じ, HLA一致非血縁者間骨髄移植を受けた前移植歴の無い血液がん患者とそのドナーのDNAと臨床情報を収集した(第1・第2コホート各360・150ペア). 患者・ドナーIL-17SNP(rs2275913, G197A)は, TaqMan SNP遺伝子多型解析法で決定. 健常人49名から末梢血単核球(PBMC)を採取後, IL-17誘導能におけるIL-17SNPの影響を検討した. さらに, ゲルシフト解析で, 核内抽出物とIL-17プロモーター遺伝子の結合性を検討した. 【結果】IL-17-G197A遺伝子多型頻度は, 患者がA/A12%・A/G52%・G/G36%, ドナーがA/A18%・A/G53%・G/G29%(Hardy-Weinberg均衡). 第1コホートの多変量解析では, Aアリル陽性(A/AまたはA/G)患者は, 移植後急性GVHDの有意な危険因子であり, 急性GVHD死亡が増える傾向がみられた. これは, 第2コホート解析でも裏付けられた. A/A患者・A/G患者間に明らかな差異は無かった. また, ドナー側のIL-17遺伝子多型は, 移植後転帰に有意な影響を示さなかった. 健常人活性化PBMCのIL-17産生をみたところ, A/A群・A/G群は, G/G群に比べ, IL-17誘導能は有意に高かった. さらにゲルシフト解析上, AアリルはGアリルより核内抽出物との結合性が高かった. 【考察】患者がIL-17プロモーター遺伝子Aアリルを有する場合, 転写因子と結合しやすく, IL-17を高発現することにより, 急性GVHD発症が助長されると考えられた. そのような患者は, 移植後免疫抑制を強化し急性GVHD発症を抑制すれば, 移植関連死亡が減るかもしれない.
ISSN:1881-3011