4. 末梢血幹細胞採取から移植までの安全性向上への取組み

【はじめに】末梢血幹細胞採取は, アフェレーシスに関連する副作用・合併症だけではなく, 患者移送によるリスクや患者にとって長時間拘束されることによる身体的・精神的負担を考慮して, 安全に行うことが重要である. また, 幹細胞移植の際には, 血液製剤の過誤輸血と同様に, 取違えのリスクについても配慮する必要がある. 今回, 当院における末梢血幹細胞採取から移植までの安全性向上への取組みについて報告する. 【取組み】当院輸血部では, 従来, 末梢血幹細胞採取は自己血採血室で行っていたが, 2006年7月から, 小児患者や採取場所への移動を極力回避したい患者の場合には, 輸血部スタッフが病棟へ出張し...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 56; no. 3; p. 413
Main Authors 豊田久美子, 大澤俊也, 平沢麻衣, 鴇田果秀, 中村裕樹, 降田喜昭, 市川佳世子, 小林光枝, 大坂顯通
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2010
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ISSN1881-3011

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Summary:【はじめに】末梢血幹細胞採取は, アフェレーシスに関連する副作用・合併症だけではなく, 患者移送によるリスクや患者にとって長時間拘束されることによる身体的・精神的負担を考慮して, 安全に行うことが重要である. また, 幹細胞移植の際には, 血液製剤の過誤輸血と同様に, 取違えのリスクについても配慮する必要がある. 今回, 当院における末梢血幹細胞採取から移植までの安全性向上への取組みについて報告する. 【取組み】当院輸血部では, 従来, 末梢血幹細胞採取は自己血採血室で行っていたが, 2006年7月から, 小児患者や採取場所への移動を極力回避したい患者の場合には, 輸血部スタッフが病棟へ出張し, 衛生環境が整った個室で採取を行っている. それ以外の患者および健常人ドナーの場合には, 従来通り自己血採血室で幹細胞採取を行っている. 採取した幹細胞製剤は, バーコードを印字した製剤票を貼付して凍結処理を行い, 液体窒素下にて保存・管理を行っている. 幹細胞移植の際には, ベッドサイドにおいて, 携帯端末を用いて患者リストバンドと幹細胞製剤のバーコード照合を行った後に患者へ投与している. 【採取および移植件数】2005年1月から2009年12月まで行った末梢血幹細胞の採取件数は151件(血液内科103件, 小児科30件, 泌尿器16件, 整形外科2件), 移植件数は72件(血液内科52件, 小児科17件, 泌尿器1件, 整形外科2件)であった. 調査期間中に取違え事例は発生しなかった. 【結語】末梢血幹細胞採取を病棟へ出張して行うことは, 患者移送に伴うリスクを軽減するだけでなく, 中心静脈からのブラッドアクセスを余儀なくされる患者の場合には, カテーテル管理を含め病棟において幹細胞採取を行うメリットがあるものと思われる. また, 小児患者の場合には, 普段と同じ病室で家族の付き添いの下に幹細胞採取を行うことは, 患者の精神的負担を軽減する上で重要であると思われる. 血液製剤と同様に, 幹細胞製剤の投与に際してもバーコード照合を行うことは一般的ではないかもしれないが, 取違えの防止を目的としてコンピュータ照合を行うことは, 幹細胞移植の安全性向上に貢献できるものと思われる.
ISSN:1881-3011