7. 当院における大量出血患者への輸血の実態

【緒言】 周術期死亡の主因が出血死であることが報告されて以来, 大量出血患者への対応が重視されている. 我々は, 当院での大量出血症例への輸血の実態を調査した. 【対象と方法】 過去3年間に, 術中10単位以上の赤血球輸血を行った102症例および救急外来に搬送され緊急輸血の依頼があった23症例を対象とし, 診療録のデータを解析した. 【結果】 手術症例における赤血球輸血量は, 10~238(中央値16)単位であり, 術中追加輸血に対しては88%の症例でコンピュータクロスマッチによる迅速対応が可能であった. また, 血液センターからの配送が間に合わなかったと考えられる症例はなかった. 手術症例の...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 54; no. 6; p. 665
Main Authors 東千晶, 土居靖和, 余吾ユカリ, 谷口裕美, 西宮達也, 村瀬光春, 惣谷昌夫, 萬家俊博, 羽藤高明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2008
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Summary:【緒言】 周術期死亡の主因が出血死であることが報告されて以来, 大量出血患者への対応が重視されている. 我々は, 当院での大量出血症例への輸血の実態を調査した. 【対象と方法】 過去3年間に, 術中10単位以上の赤血球輸血を行った102症例および救急外来に搬送され緊急輸血の依頼があった23症例を対象とし, 診療録のデータを解析した. 【結果】 手術症例における赤血球輸血量は, 10~238(中央値16)単位であり, 術中追加輸血に対しては88%の症例でコンピュータクロスマッチによる迅速対応が可能であった. また, 血液センターからの配送が間に合わなかったと考えられる症例はなかった. 手術症例のうち74例(73%)で回収式自己血輸血が併用され, 併用例では輸血量の47%が回収式自己血で賄われていた. 出血による周術期死亡は3例(2.4%)であり, いずれも術前に大量出血のあった緊急手術例であった. 他方, 救急外来では, O型血を含む未クロス血が23例中12例に輸血されたが, そのうち8例(67%)が死亡した. 【結論】 術中大量出血に対しては, コンピュータクロスマッチおよび回収式自己血輸血が有用であると考えられ, 待機手術患者の出血死はなかった. 他方, 救急外来では未クロス血が迅速に輸血されたにもかかわらず, 救命に十分繋がっているとは言い難く, 救命率向上のためには緊急輸血体制だけでなく総合的な救急医療体制の整備が必要であると思われる.
ISSN:1881-3011