8. 臍帯血調製開始までの保存時間の延長について

【はじめに】1997年より開始された臍帯血バンクを介した同種臍帯血移植は, 年間700例を越え, 造血幹細胞移植の一翼を担ってきている. 当初小児を主な対象としてきたが, 成人の占める割合が約8割を占めるに至り, 本年4月, 移植用臍帯血の有核細胞数(NCs)の保存時の基準が, 体重40kgの患者に必要な8×108に引き上げられた. そのため調製工程でのロス等を考慮すると採取段階でNCsが10×108を越えなければならず, 臍帯血の更なる確保が必要となった. 一方, 採取から調製開始まで4~25℃保存で24時間以内に調製開始しなければならないという基準のため, 現状では金曜夕~日曜午前の採血を...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 54; no. 1; pp. 54 - 55
Main Authors 小森久代, 森鉄男, 大山政則, 佐藤博行, 柏木征三郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2008
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ISSN1881-3011

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Summary:【はじめに】1997年より開始された臍帯血バンクを介した同種臍帯血移植は, 年間700例を越え, 造血幹細胞移植の一翼を担ってきている. 当初小児を主な対象としてきたが, 成人の占める割合が約8割を占めるに至り, 本年4月, 移植用臍帯血の有核細胞数(NCs)の保存時の基準が, 体重40kgの患者に必要な8×108に引き上げられた. そのため調製工程でのロス等を考慮すると採取段階でNCsが10×108を越えなければならず, 臍帯血の更なる確保が必要となった. 一方, 採取から調製開始まで4~25℃保存で24時間以内に調製開始しなければならないという基準のため, 現状では金曜夕~日曜午前の採血をお断りしているが, 提供を希望される妊婦さんから土日採血を要望する意見が絶えない. 以上の問題を解決することを目的とし, 臍帯血の採取から調製開始までの保存時間の延長について検討したので報告する. 【方法】採取後6時間以内に受け入れた臍帯血で, 移植用として使用できない5例について, 5℃で保存し, 採取後6時間, 24時間, 48時間, 72時間でそれぞれ10mLずつ分取し, HES法にて分離, 調製した. 凍結は簡易法(最終濃度10%DMSO)により行い, 液体窒素槽に2週間~5ヶ月保管後, 37℃恒温槽にて急速解凍した. 凍結前及び解凍後検体についてXE-2100にてNCsを, FACSCaliburにてISHAGE法でviability, CD34陽性細胞数(CD34+)を測定した. コロニー形成細胞数(CFU-GM)については, Methocult H4034を使用しCO2インキュベーター(37℃, CO2 5%)で2週間培養後測定した. 【結果】採取6時間後の凍結前及び解凍後の測定値をそれぞれ100%とした場合, 24時間, 48時間, 72時間後のNCsの平均値は凍結前で99%, 82%, 72%, 解凍後で95%, 80%, 73%であった. 同様にviabilityは凍結前で89%, 79%, 71%, 解凍後で86%, 78%, 76%, CD34+は凍結前で109%, 86%, 85%, 解凍後で98%, 95%, 85%, CFU-GMは凍結前で108%, 90%, 84%, 解凍後で103%, 92%, 99%であった. また, 48時間以上保存した2例に調製工程中に凝集がみられた. 【考察】5℃保存においてNCs, viabilityは保存時間の経過と共に減少する傾向は認められるが, 造血前駆細胞とされるCD34+, CFU-GMには経時的な減少がないため, 臍帯血採取から調製開始までの保存時間の延長が可能ではないかと思われた. ただし48時間以降に凝集がみられた臍帯血があり, 調製後の細胞減少の原因となることや移植時の目詰まり等の問題から, 保存温度など他の条件についても検討する必要があると考えられた.
ISSN:1881-3011