7. フローサイトメトリを用いた自己抗体陽性患者の輸血後赤血球寿命測定
はじめに:特異性のない温式赤血球自己抗体陽性患者にクロスマッチ陰性血を準備することはできない. しかし, 緊急や外科的な状況では, これらの患者に赤血球輸血が必要となる場合が少なくない. 幸いにも, 過去激しい溶血性副作用の報告は見られていないがその安全性は確認されていない. われわれは, 一次抗体としてマウスで作成した抗M抗体を用い, 二次抗体としてPE標識抗マウス抗体を用いた系を作成し, 自己抗体陽性患者の輸血後赤血球キメラ解析を行ったので報告する. 患者と方法:患者は2007年3月から2007年8月の間に輸血を受けた赤血球自己抗体陽性者3名であった. これらの患者は直接抗グロブリンテスト...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 54; no. 1; p. 54 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血・細胞治療学会
2008
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ISSN | 1881-3011 |
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Summary: | はじめに:特異性のない温式赤血球自己抗体陽性患者にクロスマッチ陰性血を準備することはできない. しかし, 緊急や外科的な状況では, これらの患者に赤血球輸血が必要となる場合が少なくない. 幸いにも, 過去激しい溶血性副作用の報告は見られていないがその安全性は確認されていない. われわれは, 一次抗体としてマウスで作成した抗M抗体を用い, 二次抗体としてPE標識抗マウス抗体を用いた系を作成し, 自己抗体陽性患者の輸血後赤血球キメラ解析を行ったので報告する. 患者と方法:患者は2007年3月から2007年8月の間に輸血を受けた赤血球自己抗体陽性者3名であった. これらの患者は直接抗グロブリンテスト陽性で, Rh特異性は認めなかったがクロスマッチ陰性血を得ることはできなかった. 症例1は年齢83歳, 男性, 診断はクラミジア肺炎で体重42kg, 輸血前Ht15.4%, 症例2は年齢88歳, 女性, 診断は大腸癌で体重37kg, 輸血前Ht19.6%, 症例3は年齢72歳, 男性, 診断は慢性腎不全で体重66kg, 輸血前Ht21.5%であった. 抗体価はそれぞれ, 症例1. 128倍, 症例2. 4倍, 症例3. 128倍であった. これらの患者はM陰性でABO同型のM+RBC-LR2(55%300mlのHt)をそれぞれ1袋, 2袋, 2袋輸血された. 輸血後患者血算用検体の残りを用いて赤血球を固定後, 抗M抗体(マウスIgM)を一次抗体とし, PE標識抗マウスIgM抗体を二次抗体としてFACS-Calibur(BD)を用いて分析を行った. 各医療機関に輸血後の連続した血液検体と患者の身長, 体重, 血算のヘマトクリット値の提供を依頼した. 結果:症例1のRCC-LR2の赤血球量は, 173mlであった. 24時間の赤血球回復は, 137ml(79.4%)であった. 輸血された赤血球の半減期は, 症例1. 9.4日, 症例2. 14.9日, 症例3. 15.7日であった. 結論:温式赤血球自己抗体陽性患者の, 24時間後の輸血後赤血球回収率はおよそ80%であった. また赤血球の半減期はおよそ2週間であった. 24時間の回復は大きな低下はなかったが, 半減期は通常の赤血球輸血と比較すると約1/2に低下していた. これらの結果から, 赤血球破壊の強いAIHAではない自己抗体による赤血球障害の程度は臨床的に許容できる範囲内と考えられた. |
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ISSN: | 1881-3011 |